三井生命から「三井」剥奪!? 「三井商号商標保全会」って

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三井不動産の中に

 それにしても、戦前の財閥が突然よみがえってきたような話である。

「保全会のルーツをたどると、戦後の財閥解体にまで遡るのです」

 とは、財閥研究者で『三井グループの研究』(洋泉社)の著者・菊地浩之氏だ。

「財閥解体の際、GHQは政令で『三井』の商号使用を禁止します。これに対して江戸英雄氏(三井不動産元会長)ら幹部は、『月曜会』という集まりを作って、吉田茂首相などに政令解除を働きかけた。商号の使用料をグループ会社から徴収し、困窮する三井家の生活費にあてる目的もありました」

 政令が解除されると、三井グループの再結集を目指す江戸氏は「二木会」を結成。その下に商号・商標を管理する「保全会」が作られる。1956年9月のことだ。

「江戸氏が“三井”の復活に尽力したという経緯から、保全会の事務局は三井不動産の中に置かれ、現在まで引き継がれています。もっとも、いつも活動しているわけではなく、実態は三井グループ企業の総務などを担当する幹部の集まりと見て良いでしょう」(同)

 だが、ひとたび二木会以外の会社が、「三井」を名乗ったり商標を使ったりすると、保全会は猛然と阻止に動く。実際、3年前に三井グループとは無関係の「三井建物」という会社が商標登録しようとした際には特許庁の審判に持ち込んで撤回させたこともあった(請求人は三井不動産)。グループの一員でなくなった三井生命もまた、三井を名乗ることはまかりならぬというわけなのだ。

 そこで、保全会に聞くと、

「たしかに三井生命さんとは、何度かお話はしましたが、社名変更をお決めになるのは、先方の会社です」(担当者)

 一方、三井生命は、

「三井グループ内の話し合いであり、当社からの回答は控えさせていただきます」(調査広報グループ)

 新社名は年内にも決められるという。

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

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