今年は「丸」「炭谷」で36億円? 巨人が24人のFA選手獲得で使った資金はいくらか
“常勝巨人”は過去の夢
逆に、FAで獲得した選手数が最も多い球団は、当然ながら「金のある」巨人だ。総勢24人。10億円台の大型契約も少なくない。まずは表をご覧いただきたい。
まずは中身を詳しく見ておこう。24人のポジションは上から順に、投手(13人)、内野手(8人)、外野手(2人)、捕手(1人)という内容になった。投手偏重は巨人らしいが、意外なのは外野手が極端に少ないことだ。
10億円を超える大型契約となったのは、いずれも複数年契約だが、20億円の杉内俊哉氏(38)、18億円の清原和博氏(51)、16億円の小笠原道大氏(45)、15億円の陽岱鋼(31)、12億円の江藤智氏(48)という顔ぶれになる。
そして契約年数を見てみると、上記の通り清原和博氏と陽岱鋼氏の5年がトップになる。どちらかと言えばファンの期待を裏切った2人というのも興味深い。
24人をFAで一本釣りするために契約した金銭を合計してみると、143億1900万円。これに対して日本ハムは――あくまでも報道ベースだが――FAに投じた資金は、たったの1億2000万円だ。
3位の楽天は、契約額自体は決して安くない。それでも、中村紀洋氏(45)の3億円(2年契約)、今江敏晃氏(35)の5億円(2年契約)、岸孝之氏(33)の16億円(4年契約)を足しても24億円だ。巨人の143億円に比べれば6分の1に過ぎない。
選手会などの調査によると、今年2018年、外国人選手を除く球団の総年俸を見ると、1位はソフトバンクの63億2000万円。巨人は2位で46億2000万円。そしてワースト3は、
【3位】 23億7000万円 日本ハム
【2位】 22億3000万円 中日
【1位】 21億2000万円 ロッテ
という結果だ。これで巨人がFAに投じた143億1900万円と比較してみれば、あのソフトバンクでも2年分の年俸を捻出することが可能で、ロッテに至っては6年分を支払っても、まだお釣りが来るという具合だ。
それほどの額なのだ。そのため「143億円」と検索エンジンに入力してみると、表示されるのは政治や経済のニュースが大半を占める。
◆「サンゲツ、米壁紙大手を買収 143億円で完全子会社に」(日本経済新聞電子版:11月14日)
◆「一般会計当初予算143億9000万円 - 白岡市」(編集部註:埼玉県白岡市の平成30年度一般会計当初予算についてのPDF文書)
◆「東邦チタニウム、143億円の第三者割当増資を実施」(日刊工業新聞電子版:12年3月29日)
◆「任天堂の中間決算、4年連続で営業赤字 為替差益で最終黒字は143億円に拡大」(産経新聞電子版:14年10月29日)
車やマンション、高級衣料といった話題は、全く検出されない。たとえ富裕層であっても、143億円は桁が違うのだろう。巨人のFAは、M&Aに匹敵する“経済規模”というわけだ。
ちなみに読売新聞の朝刊は130円。新聞を売ることで143億1900万円を稼ぐとすれば、約1億1000万部が必要になる。日本人が全員、読売新聞を買った時に得られるのと同じ金額を巨人はFAに投入してきたわけだ。
これだけの巨費を投入したわけだが、落合博満氏(64)を獲得した翌年にあたる1994年のシーズンから今季までの25年間、セ・リーグ制覇は10回。うち日本一は5回というデータになる。
これは40%の割合でしかリーグ1位になっていないことを意味する。60%は2位以下に甘んじているのだから、いくらFAに巨費を投じても、“常勝巨人”は完全に過去のものになってしまったわけだ。
ちなみに同じ期間における「セ・リーグの制覇回数ランキング」を見てみると、2位は中日で5回。3位はヤクルトで4回となっている。そして両チームはFAに消極的なチームだと言えるのは皮肉だろう。
先ほどの「FAに消極的な球団ランキング」では4位に楽天、西武、ロッテが並んだ。次の5位はヤクルトの4人であり、6位のオリックス(6人)を挟み、7位は中日の7人となった。となれば、「優勝のコストパフォーマンス」は巨人と比べものにならないほど高いと言えるはずだ。
確かに「札びらで頬を引っぱたく」メリットもあるのだろう。だが、無用の反感を買うことも事実だ。もし丸選手と、同じくFA権を行使した西武の炭谷銀仁朗(31)が巨人を選択した場合、彼らの野球人生が激変することだけは間違いない。
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週刊新潮WEB取材班
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