“大手広告代理店”部長から“レンタカー会社”法人開発へ 「顧問派遣会社」に登録した64歳の充実

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転職上手なシニア、下手なシニア

 そんな彼に実際の収入を聞いてみたところ、

「前職に比べて4分の1ほどですが、そもそも勤務時間が減っていますからね。いつまでも過去の栄光に縋(すが)りつくのではなく、ゼロベースで新たな仕事に挑戦する気持ちで頑張っています。異業種でもこれまでの経験が活かせ、学べることも多いので充実していますよ」

 実は、いわゆる「勝ち組」と呼ばれる人たちには、共通する特徴があった。

 公共職業安定所ハローワーク池袋の職業相談部長・高橋大弐氏が言うには、

「転職が上手くいくシニアは、条件にこだわりすぎない、新しいことへの切り替えができる人。そうでないと、半年、1年と就活が続いてしまうのです」

 定年後の空白が長引くと失敗する。そんな実例を紹介するのは、ベストセラー『定年前後の「やってはいけない」』の著者で、これまで中高年3千人以上の転職・再就職をサポートしてきた郡山史郎氏である。

「定年まで機械メーカーで技術部長として働き、年収は約1200万円。中国の工場で勤務していたという経歴までほぼ同じの2人から相談を受けたことがあります。ちょうどその頃、ある中小企業が中国に強い経験豊富な人材を求めていて、顧問料は月20万円でした」

 この条件を2人に提示したところ、1人は“安すぎる。最低でも50万円は欲しい”と難色を示したものの、もう1人は喜んで引き受けた。再就職から1年後、能力を見込まれた彼は中国とのテレビ会議など重要な場面だけでよいとされ、週3日から1日勤務へ。余った時間で、他企業の顧問を月20万円で始めて、最終的には4社で月80万円。現役当時と変わらぬ報酬を得るに至ったのだ。

 一方、月50万円の報酬にこだわった方はといえば、

「仕事が見つからないまま3カ月が過ぎ、月収40万でもいいと言ってきました。さらに3カ月が経ち30万まで条件を下げ、最終的に15万円でも構わないとまで仰いましたが、企業はブランクが空けば空くほど、即戦力になるのか疑うもの。結局、2年目の途中で再就職を諦めてしまいました」(同)

(3)へつづく

週刊新潮 2018年11月15日号掲載

特集「人生最後の節目『65歳』再就職術の『勝ち組』『負け組』」より

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