年金受給、何歳からが正解か? 考えるべきは「寿命」ではなく「余命」

ドクター新潮 その他 年金

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デマが飛ぶ「年金受給」は何歳が正解か(1/3)

「人生は選択の連続」と言われるが、最良の答えを導くには相応の知識が欠かせない。特に「年金受給」は老後を左右するだけに、判断を誤れば大損である。近い将来と囁かれ出した国民年金の制度変更。乱れ飛ぶ情報の海で、正解とデマを見分ける術をお届けしよう。

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〈もはや戦後ではない〉――昭和31年、時の鳩山一郎政権下の経済白書で記された一文は、日本に高度成長期の到来を告げる。その5年後に始まった「国民皆年金」制度は、労働者にバラ色の老後を約束するものだった。しかし、今や政府は閣議で「人生100年時代、65歳はもはや老後ではない」と言ってのけ、年金受給の開始年齢を変えようとしている。そのターゲットは、昭和に生まれ日本を支えてきた世代である。

 10月10日、厚生労働省で開かれた社会保障審議会の席で、立命館アジア太平洋大学の出口治明学長が、

「高齢者は若返っている。昔の65歳は今の75歳だ」

 と論じ、公的年金の受給年齢見直しを示唆した。

「国は、75歳までの引き上げを視野に入れています」

 と、全国紙の社会部デスクが解説する。

「昨年、全国の就業者に占める高齢者の数は過去最多で、特に65歳以上の割合が6年連続で増加したのに対し、75歳以上はほぼ横ばいだったことに国は注目しています。ならば、定年を70歳にして年金の受給年齢を遅らせてもいいのでは、と考えているのです。一億総活躍を唱える安倍総理は総裁選で、3年以内の年金改革に言及。財務省からも、まずは68歳に変更する案が提言されています」

 選挙が不利になるので、来年夏の参院選まで表立って具体化することはないとの見立てもあるが、超高齢化社会で財源の不足は必至。政府は水面下で着々と年金見直しの青写真を描いている。

 ならば、我々の年金はどうなるのか。死ぬまで働けということか。年金の額が少なくなるのでは……。

 そんな人々の不安に応えるように、昨今はメディアでも年金についての様々な解説が飛び交う。中でも必ず話題となるのが「年金受給」の開始年齢。65歳から支給される現行制度での、「繰り上げ」「繰り下げ」問題に注目が集まっている。

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