戸田恵梨香 「大恋愛」に見る“かわいい”だけじゃない万能調味料な女優力
「かわいいは正義」を超える、万能調味料感の正体
ふと思うのは、戸田恵梨香は美人だが、今まで「美人売り」を意外としてこなかった女優だということだ。男女両方から美人だと言われる、石原さとみ、綾瀬はるか、長澤まさみ、新垣結衣らの同年代の主演女優たちに比べると、美人女優としての戸田の印象は弱い。芯が強く、しっかり者の役が多かったのもあるだろう。とはいえ、美人ヒロイン像に固執することなく、演技にもひょうひょうと取り組んでいるように見える。つまり、本人が「可愛く美しく撮られること」にあまり意識を向けていないように思うのだ。そのいい意味で女優らしくない姿勢が、まさに万能調味料感の正体であり、主役のオファーが途切れない理由なのではないだろうか。
「かわいいは正義」という言葉は、美貌さえあれば何をやっても許される、という身もふたもないネットスラングである。しかし今や、「かわいい」より「かわいげ」の時代ではないかとも感じる。SNSが発達した今、ちょっとした言動がやり玉にあげられ命取りになるからこそ、美貌にあぐらをかいているわけではない、というエクスキューズが求められる。芸能界も例外ではない。広瀬すずや橋本環奈も映画やドラマで変顔をさらし、「かわいいのにあんなこともできる」と好感をもって語られる。バラエティでは親子の悩みや体のコンプレックス、心の闇を語るタレントやアナウンサーたちがお茶の間を席巻し、「美人で恵まれているように見えるけど、実は私もあなたと同じ」と親近感を打ち出す。
しかし戸田は、そういう小手先のことをしない。おそらく変顔も求められればやるし、鼻くそくらいほじるだろう。もちろん悩みだって山のようにあるだろうが、好感度と引き換えにプライベートを赤裸々に話す、ということもないのではないか。それでも、彼女の女優としての存在感は揺るがないし、かわいらしさも失わない。今回の役柄も、「やせている」とは何度もドラマ内で言及されるが、「美人」とは表現されない。しかし視聴者の感想を見ると、「戸田恵梨香がかわいい」という声も多く挙がっているのだ。
かわいい役柄を選び続けているわけでもない。三枚目を演じて逆説的に「かわいげ」を手にするわけでもない。それでも人気とかわいらしさを保ち続ける戸田の万能調味料感。前述の同世代女優らと比べると熱愛スクープも多く、彼女と噂された男性たちはみな売れる、という下世話な記事も過去あった。しかしそれもまた、相手の持ち味を引き出すことのできる、戸田の万能調味料的な魅力ということなのだと思う。酸いも甘いも噛み分けた彼女の演技力で、「大恋愛」がひと味違うドラマになるか、この先が本当に楽しみである。
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