積水ハウス地面師事件 高飛びの主犯格が弄んだ「錦糸町の金髪」の告白
“ビジネストリップ”
日本での小山容疑者の「最後の日々」を知るマリアに店で接触したところ、当初は取材拒否の姿勢を示していたが、徐々に警戒心を解いていった。そして、小山容疑者の“正体”を伝えた際に感謝の言葉まで漏らしたのは前述した通りである。
「コヤマが初めて店に来たのはいつくらいだろう? あんまり覚えてないけど、そんなに前のことじゃない。私のことは、“前の彼女”とか“奥さん”だとかに似てるって言って気に入ってくれた」
マリアはそう語った。
「コヤマとセックスしたかって? 絶対にしてないよ。私、ハイプライドだから、お客さんとはそういうことはしない。どんなにお金をもらってもありえないよ」
――小山容疑者はあなたの体の複数個所にピアスがあったと話していたようだが?
「鼻の穴には確かにピアスはついているよ。だけど、乳首にピアスなんてついてない。おへそにはついているから、そのことを言っているのかもしれない」
――小山容疑者と浅草のマンションで同棲していた?
「確かにコヤマのマンションに住んだことはあるけど、2、3日だけ。次の引っ越し先が見つかるまでちょっといただけだよ。それに、コヤマはオダイバに住んでいたでしょう?」
――高級なバッグやアクセサリーを買ってもらった?
「ないない。私が買ってもらったのは、ブランドの口紅と香水だけ」
――小山容疑者は、店に行くのが面倒だから100万円を渡して直接会っていた、と話していたようだが?
「ヒャクマン円! ありえないよ。私、本当にコヤマのことよく知らないんだよ。仕事も、何してるのって聞いたら、笑いながら“タクシードライバー”としか言わないし」
――最後に会ったのは?
「もう、忘れちゃったけど、最後に会った時には、別に何も言ってなかった。フィリピンに行くなんて話も聞いてない。セキスイハウス? 聞いたこともない。ただ、ちょっと前に私がLINEしたら、“ビジネストリップだ”って返事が来て、私が“なんで? またお店来て。いつ帰ってくるの?”って送ったら返事が来なかった。それで私、怒って彼とのやり取りを全部消しちゃったの」
あぶく銭を持った男が夜の街の片隅で外国人美女を見初め、交情を深めた後に離れ離れになる。吹けば飛ぶような人間関係だが、そこには間違いなく欲や情が存在した。また、騙された積水ハウスが「不都合な情報」を無視してまで契約に前のめりになったのは、分譲用マンション建設という実績が欲しかったからだとも言われ、そこにも担当者の欲得が絡む。「億の金」の周辺では常に、剥きだしの欲望が揺らめいているのだ。
[3/3ページ]