宮司交代の靖国神社、背景に内部闘争か 創立150周年を控えてのゴタゴタ

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「負の遺産」見直しの矢先に…

 さすがにこの状況では、英霊に対し安心して眠ってくださいとは言いにくかろう。さらに、靖国神社が来年に創立150周年を迎えるのに合わせて、

「御創立150年記念事業およびそれに付随する中長期計画というものが進められ、その総額は約35億円にものぼります。だいたいが『見た目』を改善するもので、そんなことをやっても崇敬心は高まらないだろうという事業なのですが、金額ベースでその4割前後を、ひとつの小さなコンサルタント会社が請け負っている。こうした状態は徳川宮司の時に作られたもので、彼のもとで好き勝手に振る舞っていたのが徳川グループです。小堀宮司は、この事業も問題視し、組織改編を断行。改編された組織が、11月1日付で始動する矢先のことでした」(同)

 とどのつまり、徳川時代の「負の遺産」の見直しが実行に移される時を見計らったかのように、音声データは流出したのである。それも前記した通り、徳川グループが関わっていると見られる形で。そして、その責任は不問に付される格好で――。

 当の靖国神社は、

「ご指摘のような神社内でのクーデターという認識はございません」

 と言うのだが、企業法務や不祥事対応に詳しい渥美陽子弁護士は首を捻る。

「本来、懲戒委員会を発足させ、音声データ流出の経緯を調査し、事実確認をした上で流出させたと思われる者を処分するかどうか、処分を行うとしたらどのような処分を行うのが妥当か、議論し、結論を出すべきだと思います。ところが今回は、処分をしないという結論が調査報告より先に出ているので、結論ありきとの印象を受けます。公正な調査が行われた上での結論だったのか疑念を招く恐れがあり、背景に組織の内紛や内部対立があると見られても仕方がない」

新宮司は…

 宗教学者の島田裕巳氏が総括する。

「今回の一件は神社界全体のゴタゴタを象徴しています。根本には、現代の神社のあり方そのものの問題が潜んでいる。とりわけ靖国神社は、戦没者遺族の高齢化で岐路に立たされており、神社を支える人たちが少なくなっています。そうした状況で、宮司には難しい舵取りが任されているわけですが、適任者が出てこない。いずれにせよ、ご遺族や国民にとって、内部のゴタゴタは傍(はた)迷惑な話です」

 その結果、平成最後の秋に、天皇陛下と靖国神社の「距離」はますます離れていくばかりのように映る。

 なお参考までに、新宮司に就任予定の山口建史(たてぶみ)氏(70)は、「徳川時代」にナンバー2にあたる権宮司を務めた人物である――。

週刊新潮 2018年11月1日号掲載

特集「『不敬発言』流出はクーデターという『靖国神社』神々の権力闘争」より

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