資産価値暴落必至の「KYBダンパー」マンション 今後2年は買い叩き続く?

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 油圧機器大手KYB(東京)が検査データを改竄(かいざん)していた免震・制振ダンパー。

 そもそも、これらの装置が注目されたのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災がきっかけだった。震度7クラスの地震でも倒壊しなかった建物に、オイルダンパーが取り付けられていたことが話題となり、先の東日本大震災でも震度5強の揺れに耐えた建物が多数あったことで、普及に拍車がかかったのである。

 日本免震構造協会の調べによれば、免震装置を採用した建物は、94年時点で全国に84棟しかなかったが、2016年には都市部を中心に4345棟と急速に増加しているのだ。

 建築構造学が専門で、東京理科大学教授の高橋治氏が解説する。

「地震で建物の下層にあるオイルダンパーや免震ゴムに力が加わると、揺れのエネルギーを相殺する仕組みになっています。ローラースケートを履いた人間が、殴られても滑って衝撃を逃すようなイメージです」

 片や「制振ダンパー」は、建物上部の内側に使用されると続ける。

「こちらも人間に例えれば、パンチなどの衝撃を吸収する筋肉や脂肪の役割を担います。骨にあたるのが建物の柱。まさに骨組みですが、設計者はダンパーの性能を基にして建物の耐震構造を考える。ダンパーが本来の性能を満たさなければ、問題が発生してしまいます」

 建築基準法では、大規模地震(震度6強~7)でも倒壊しない建物が求められ、「免震ダンパー」は同等の揺れに耐えうるレベルの国交相認定基準が定められている。

「制振ダンパー」に国の定めはないが、KYBは顧客契約で法的な耐震基準より厳しい性能を謳ってきた。

 その信頼を裏切ったのが今回の騒動なわけだが、

「急遽、国交省が専門家を交え行った検査では、最も基準値を逸脱したダンパーを使った建物でも、震度7クラスで倒壊しないという結果が出ました」(全国紙社会部記者)

 直ちに危険はないとひと安心しつつも、その余波は“風評被害”となって建物売買の価格を左右する。

 個人向け不動産コンサルティング(住宅診断)を行う「さくら事務所」創業者で会長の長嶋修氏が言う。

「過去の耐震偽装問題と決定的に違うのは、建物そのものがダメだという話ではないこと。耐震性能を上げる装置に不正があった、ということですから問題のレベルは異なります。とはいえ、KYBのダンパーが使われているマンションと分かれば、不安に感じて買わない人や、売れなくて困る人も出てくるでしょう。すでに幾つかのマンションでは、KYB製ダンパーを使用していない旨をウェブ上で表明しているところもあります」

 ちなみに、中古マンションの売買契約に際しては、重要事項説明書の作成が求められるが、そこに“KYBダンパーの有無”について記載する義務はない。

 再び長嶋氏が口を開く。

「売り主が言わない限り買い手は気づかないので、私は載せる必要があると考えます。仲介に不動産会社が入れば教えて貰えると思いますが、売る側が使用していることを明らかにすれば、泣く泣く買い叩かれることがあるかもしれない。こういった状況が、今後2年間は続く可能性があります」

 KYBは無償でダンパーを交換するとしているが、作業が終わるのは最短でも約2年後。20年9月までかかる見込みで、その間は交換品の生産に全力を注ぐと釈明しているが、東京五輪の開会式に間に合わないのは確実なのである。

 目下、建設中のオリンピックアクアティクスセンター(江東区辰巳)にも使われており、小池都知事は“最優先で交換を”と憤る。

 先の高橋氏によると、

「免震ダンパーを交換するにも、免震層から外して運び出すために、張り巡らされた配管を整理するので、上下水道を止める必要が出てくるケースもある。制振ダンパーの場合はもっと大変で、30階のタワマンなら1フロアに最低8本程度、建物全部で240本程度が設置されています。大半は内壁の中に埋め込まれていますから、それを壊して作り直す必要もある。住民の方は工事中、1カ月ほどのホテル暮らしを余儀なくされることもあると思います」

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