スマホ時代で「プリクラ」の落日、シール機大手が倒産、残る1社の生き残り戦略

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スマホとの共存を選んだプリクラ

「各社とも“美しく写る”ことアピールし始め、それが極端になったのがいわゆる“デカ目”でした」(同)

 目を大きく修正すること、別人のように“盛った”プリクラが流行った。なかには、ほっそりさせた輪郭からはみ出すほどのデカい目も……もはや人類ではない。

 そして07年、iPhoneが登場。スマホ時代の到来である。プリクラ市場は08年には250億円、09年には230億円にまで縮小し、この年、最初のプリントシール機「プリント倶楽部」を作ったアトラス社が業界から撤退する。

「2010年頃からは、行き過ぎた修正からの揺り戻しで、各社、ナチュラル志向へと移ります。もちろん、“盛る”ことは外せないので、いかに加工感を少なく美しく写せるか、美肌や透明感などを工夫することで、11年には300億円規模へと回復します。最盛期には松下や日立なども参入したプリクラ業界ですが、この頃にはすでに4社となっていました。そのうち辰巳電子工業が2年ほど前に事業を縮小、アイ・エム・エスもゲームセンターへの定期的な販売はなくなっており、それに続く形でメイクソフトウェアも10月24日に破産手続き開始決定を受けたわけです。これで“プリクラ”機メーカーは事実上、最大手のフリュー社1社といっていいかもしれません」(同)

 メイクソフトウェアは、今年春には、NTTドコモと提携したご当地プリクラや、夏には人気の竹内涼真(25)の主演映画「センセイ君主」とコラボ。竹内と2ショットのプリクラが撮れる機種も出たが、力及ばず……。やはり今の中高生には人気はないのか?

 数十社が参入したといわれるプリクラ業界だが、今や1社とは……。写真加工ならスマホでも十分に可能な時代ともなっている。市場規模はもちろんのこと、台数も1万台を切りそうだ。もはや消えゆく業界なのだろうか。

「売上規模は縮小していますが、台数が減ってきているのには、ライティングや広角撮影などのためにスタジオ化し、シール機がどんどん巨大化しているために、店舗に数が入らなくなったためという影響もあると思います」(同)

 業界誌「アミューズメント・ジャーナル」編集部に聞いた。

「たしかに年々、市場は縮小していますが、急激な落ち込みではないんです。スマホがプリクラのライバルであるなら、とっくになくなっていたと思います。むしろ、スマホと共存を図ってきたのがプリクラです。もはやこれ以上進化は難しいというほど画質は向上したプリクラ機から、スマホに写真をダウンロードすることで、待ち受け画面に利用したり、SNSに使ったりもできる。そのためにメーカーは、アプリ会員を集めてきました。会員になってもらうことで、自社のプリクラ機を使ってもらえるわけですからね。会員数を一番多く集めることに成功したのがフリュー社です。もちろん、シールタイプのプリクラも続いており、現在人気なのは半透明タイプのシールが作れる“SUU.(スーーー)”という機種。シール全体が半透明なので、空に透かしてインスタに載せたり、色違いの上に貼ることでイメージが変わったりするのが人気です。来年1月には、そのバージョンアップ機“SUU+(スーープラス)”の発売も予定されています」

 東京・原宿で「プリクラLAND NOA」を運営するノア社に聞くと、

「原宿店は賑わっているので、衰退とは考えていません。もちろん、地方ではお店がなくなっているところもあるようですが……。中高生の女子というユーザー層は昔から変わりませんから、若い子がいれば利用してもらえると思います。最新機種は、インスタ映えを考え、ブース内にスマホを置くスペースがついており、スマホのムービーで撮影風景を撮りSNSに上げるというものですね。店舗として気を使っているのは、パウダー室やレンタル衣装、フィッティングルームの充実でしょうか」

 たかがプリクラと言うなかれ。

週刊新潮WEB取材班

2018年11月4日掲載

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