アラ還でも女真っ盛り「黒木瞳」が黄昏ゼロ 中高年憧れ凝縮の迷走ドラマ「黄昏流星群」
前回に引き続き、台場さん(フジテレビドラマの擬人化)と対話していこうと思う。なぜなら、台場さんと私が抱く「黄昏流星群」の印象がまったく違うようだから。私は弘兼憲史の最高傑作だと思っているし、「黄昏れるってこういうことなのか!」と衝撃を受けた。中年期以降の性愛の憂いと諦め、世知辛い背景を余すところなく生々しく描き出していたから。夕暮れ時に目のかすみも重なり、「誰そ彼は?」と聞いちゃう年代、それが黄昏なのだと。だからこその切なさに、皆が心を奪われたと思っていた。
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実際自分も黄昏れてきて、視力は落ちるわ、顔についた枕のあとが数時間取れないわ、傷治らないわ、関節は軋むわ、白髪に薄毛と色々切ない。痛い・苦しいではなく「切ない」の、すべてが。
ところが台場さんの描く「黄昏れる」は何か違う。出てくる人がちっとも黄昏れてねーっ!! しゃきっとした背筋、厚い胸板、吊るしが高級スーツに見えてしまう体型の佐々木蔵之介が主演だ。男性の姿勢って大切だね。そして、女の土俵から意地でも降りない面構えの黒木瞳(いや、実際に初登場シーンはめちゃくちゃ可愛かった。昔のアイドルみたいな全身白の裏技で)、椿鬼奴か友近が女優のマネをしているかのような演技力の中山美穂。ん? 誰ひとり黄昏れていないよね? むしろ憧れ。美しく、いつまでも恋愛市場で勝ち組の人々を描く理想郷だよね?
台場さんいわく、「生活感あふれ、くたびれはてたおじさんやおばさんの性愛なんか見たかないでしょ? やっぱり美男美女でなくちゃ、視聴率も伸びないし」。
ここに大きな溝があったのだ。ドラマ化されるのは原作の中でも「適度に裕福&美男美女の不倫」話ばかり。黒木なんかこの手の作品に引っ張りだこだもんな。
ちなみに私が好きな話は、「性星活の知恵」。禿頭の55歳独身のタクシー運転手が主人公。介護生活16年、母を看取り、ひとり暮らしに。たまたま乗ってきた女性客が若かりし頃に誘惑された若奥様で……と、語り始めたら、台場さんが一言。
「そういうの、ウケないよ」
わかる、わかるよ。日本は若さと美しさ礼賛の国だから。でも黄昏の意味を噛みしめることも、時には必要なのでは? ぜひ誰かに黄昏れてほしいのに。
しかも、映像がちょっとどころか、全開で「ちゃち」。雨のシーンといい、スイスの山のシーンといい、目に余るちゃち。この高画質デフォルトの時代に惜しげもなくちゃち。テレ朝は「相棒」初回で家屋破壊シーンを見せつけたよ。安普請とはいえ、実際にショベルカーでバリッバリ壊してたよ。
おじさんとおばさんの憧れを凝縮したかのような黄昏流星群は、もはや黄昏症候群。要加療。漢方薬かサプリメントでもいいからさ。
このメンツに粉かけてくる若手が、名前でキャスティングされた疑惑を抱く藤井流星と本仮屋ユイカ。さして感動もないので、うん、まあ、はい、しか出てこず。
こうなったら台場さんの迷走に並走して、応援したい。10月は台場観察に励みます。10月もう終わるけど。