news zeroに抜擢の市來玲奈 アイドル出身アナの「生涯センター」という野心
ハロウィンの喧騒のさなか、小池百合子都知事がメーテルのコスプレをしてイベントに出ていた。トホホ、というしかないが、いま最も小池都知事に近いと私が勝手に思っているのが、日本テレビの新人アナ・市來玲奈である。
幼少の頃から競技ダンスで頭角を現し、日本代表選手に。その後乃木坂46に在籍し選抜メンバー入りを重ねながらも、学業に専念すると卒業。しかし芸能活動は続けながら、TBSの看板番組「中居正広の金曜日のスマたちへ(現在は「金曜日のスマイルたちへ」)」の社交ダンスコーナーで一躍有名となった。そして今はキー局の女子アナ、という華々しい経歴の持ち主だ。
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しかし、彼女を小池都知事に重ねる理由はキャリアの輝かしさだけではない。野心のありようが、という点なのである。おそらく両者とも、自分が「センター」になること、しかもその期間をいかに長くするかに人生の重きを置いてきたのではないか。
ダンスの日本代表から国民的アイドル、有名番組の企画で全国区に顔を売ってキー局アナへ、というチヤホヤ街道を進み続けるバイタリティと胆力。元アイドルや元モデルというアナウンサーは多いものの、政界の渡り鳥と揶揄された小池都知事どころか、芸能界の上澄みを渡り鳥のように生きる市來アナの野心は相当なものだ。
実際に局アナ内定報道後の「金スマ」では、市來からは何の釈明もないまま番組を去った、という内容が放送された。他局に内定した女性への悪意ある編集と見ることもできるが、彼女への批判は相当あったとされている。本人は事前にTBS側含めて相談をしていた、というブログも書いていたようだが、それこそ真相は闇の中だ。とはいえ、勝てば官軍といったけろっとした風情で、新人ながら「行列のできる法律相談所」や、「news zero」など看板番組に抜擢された引きは強い。華麗な過去を踏み台に、手にしたキー局アナウンサーという立場は絶対に手放さないと言わんばかりの前のめりの笑顔には、燃え続ける上昇志向をつい探してしまう。
「生涯センター」という野心のゆくえ
小池都知事も市來アナも、先のことが読める頭の良い女性なのだろう。ここは自分が中心になれない、将来性が無いと見限るのが早いからこそ、周囲がびっくりするほどの変わり身を見せる。時として、冷淡で自己中心的に見える危険を承知しながら、それでもスポットライトの当たる場所を追い求めずにはいられない。セルフブランディングをきちんと意識しながら、次のステップへと踏み出していく。
賛否両論あるにせよ、それはこれからの働き方への意識を変えるヒントのひとつになるかもしれない。かつて女子アナのセカンドキャリアといえば、寿退社か、フリー転身か、政治家転身くらいしか無かったように思う。特にアイドル出身のアナウンサーは、入社直後はチヤホヤされつつも、年を取っても第一線で働き続ける人材は少なかったのではないか。
例えば日本テレビで言えば、かつて在籍していた脊山麻理子もグラビアアイドルから局アナになり、フリーになった一人だ。しかしその後は水着DVDやプロレスに挑戦したりと迷走している。人気を過信してフリー転身してはダメだとわかる、いい失敗例だろう。他局だと元フジテレビの平井理央や元テレビ東京の紺野あさ美もアイドル出身アナウンサーだが、結婚・出産後は仕事をセーブしているように見える。
だからこそ、かつてのアイドル出身アナとはひと味違う野心を秘めた市來が、いつ見切りをつけて、次にどのような道を選ぶかは興味深い。そして他人の目にとらわれず、「生涯センター」の道を求め続ける姿勢が普通のことになった時、もう少し生きやすい社会になるのではないかと感じるのは楽観が過ぎるだろうか。ちなみに小池都知事は冒頭のイベントにおいて、「踊る阿呆に見る阿呆」という言葉を引き合いに出している。続く言葉は、「同じ阿呆なら踊らにゃ損損」である。今の状況がバカみたいと嘆くなら、我慢して見ているより、自分がやりたいようにやらないと損。渡り鳥的な人生信条に通じるし、市來もきっと同じだろう。
対照的に、いま彼女が出演中の「news zero」のメインキャスター・有働由美子は、NHKという堅い男社会を、自虐を武器に長年生き抜いてきたアナウンサーだ。そんな心身ともに滅私奉公型の働き方や考え方は美徳とされていた時代もあったが、限界が来ているのは個人も国も同じではないだろうか。
「news zero」は有働の起用に対する賛否ばかりが取り上げられがちだ。しかしいつか、思わぬタイミングで嵐を起こすのは市來だと思う。次の大きな節目は、2年後の東京オリンピックだろうが、すでにその後を考えて対策を進めていると予想する。踊らにゃ損損、とあちらこちらへターンを決める市來の野心のゆくえから、しばらくは目が離せない。