“育ててしまった”認識を――米副大統領の中国への「宣戦布告」(KAZUYA)
まさに潮目が変わった……とでも言うべきか、10月4日に米国保守系シンクタンクのハドソン研究所で行われた、ペンス副大統領の演説には驚きました。40分にわたり演説で、中国に対してかなり踏み込んだ発言をしているのです。
昨今話題の米中貿易戦争は当然のこと、過去から現在までを振り返り中国を糾弾しています。
演説の中に出てきましたが、米国は(もちろん日本も)中国の動きを楽観視していたところがあります。ソ連も崩壊して自由化へ進むかと思われた中国ですが、世界貿易機関に加盟し、経済基盤を築いて勢力を伸ばしながら、政治的には監視や弾圧が強まるばかりです。新疆ウイグル自治区では100万人に及ぶ人々を強制収容し、思想改造を行うというとんでもない人権侵害をしているとも言及しました。
中国は技術や知的財産を盗み、軍事転用し日本や米国にとって大きな脅威となっています。尖閣諸島は日本の施政下にあることをペンス氏は言明し、南シナ海などの問題も一切妥協しないとの姿勢を見せました。
しかし楽観主義に基づいて日本や米国が中国を支援し企業もそちらに流れた結果、潜在的な敵国を育ててしまったという点をしっかり認識する必要があるでしょう。
中間選挙を控える米国にとって重大なのは、中国が選挙に干渉を図っている点です。中国はトランプ大統領以外を望んでおり、そのために工作活動を展開しているというのです。国際世論形成のために中国は力を入れており、テレビはもちろん、ハリウッド映画でも中国を肯定的に描くよう干渉しています。
米国は中国のような独裁国家と違って、自由があります。中国が自国に有利になるように米国に工作をしかけるというのは、自由な社会ではある程度できてしまうのです。
豪州で今年発売され、話題になっている「サイレント・インベージョン」という本では、著者のハミルトン氏が中国の手法について書いています。中国は「民主主義の手法で民主主義を破壊」するのです。
貿易の問題だけに留まらず、今後米中は長期的な覇権争いを繰り広げることでしょう。地理的にも米中の間に立つ日本としても、政治家はもちろんとして国民も世論操作などに惑わされぬよう警戒感を強める必要があります。
ペンス氏の演説は、海外だと「宣戦布告」や「新冷戦」などの見出しでセンセーショナルに報道されています。しかし日本国内の報道は寂しいものがあります。今後の数十年の世界情勢を転換させるかもしれない一大事なのに、社説で書いたのは産経新聞くらいです。報道機関に入れてはいけませんが、滑稽なのが日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」でした。ペンス氏は中国について演説の大半の時間を割いたのに、見出しは【米副大統領「交渉はFTA」】で、内容を見ても一切中国が出てきません。意図的な隠蔽でしょう。
日本の報道は相変わらず重要な世界情勢よりモリカケ。野党も臨時国会でモリカケで攻めるとか……。明らかに時間配分がおかしいのです。もううんざり。