積水ハウスが引っかかった“55億円詐欺” 間一髪逃れた「大手デベロッパー」と「地面師」との交渉
“今すぐストップ”の電話
そして翌日、この業者は権利証のコピーを持ってある法務局に出掛けた。
「実は法務局ではハンコを定期的に変えているんです。外部には内緒で。だから、この土地が当時の所有者に相続された1960年頃のハンコと、権利証のコピーのハンコを突き合わせれば、本物かどうかがわかる。こっちも70億の取引だから必死ですよ。法務局にもその熱意が伝わったのか、それこそ5、6人で3時間くらいかけて当時のハンコを調べてくれましてね」
以下はそのQ&Aである。
法務局 素晴らしく良くできたハン。ただ、少し小さいのと文字が少し違います。
業者 じゃあこれは偽物か。
法務局 いや、それははっきりとは言えない。これをコピーさせてもらって法務局としてちゃんと調べたい。
業者 聞いているのは偽物かどうかなんです!
法務局 気を付けた方がいいとは言えます。
***
この業者が続ける。
「大手デベロッパーに電話して、“今すぐストップしてくれ”と。向こうは契約書の準備もお金の段取りもできて、いざ契約という段階でしたから、“そんなことないだろ”と言う。僕が“大変なことになるから、ここは諦めてくれ。絶対に偽物なんだ”と説得した結果、わかってくれました。容積率の面で優遇されることもあり、あそこにはホテルを建てる計画になっていました。あんだけ駅近で場所も良いから100億くらいの価値は優にある。デベロッパーとしては諦めきれない物件なんですよ」
これを裏返せば、
「70億は格安なんです。こっちとしては飛びつきたい。それを向こうはよくわかっている。小山も“2番手に積水が来ている。あんまり遅いと行っちゃうよ”と煽ってきた。僕らが下りた後、積水にも伝えようと思ったんですが、担当部署がよくわからなかったので、知らせずじまいになりました」
[2/2ページ]