被害額55億円 地面師に騙された「積水ハウス」が“五反田の土地”に飛びついた事情

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無視された報告

 JR山手線の五反田駅西口から桜田通り沿いを南西に向かい、目黒川を渡ると不気味な森が目に入る。瓦屋根の建物がタイムスリップした感覚を生じさせる。その間わずか3分。元々は旅館だった「海喜館(うみきかん)」である。

 登記簿謄本によると、1960年に旅館を切り盛りする女将が相続した土地は約600坪。抵当はついていない。権利関係がややこしくなく、区画整理も不要とあり、業者にとってかねて垂涎の的だった。当然、所有者の女性には陰に陽にラブコールがあったが、首を縦に振ることはなかった。

「各社、指を咥(くわ)えて見ているほかなかったんですけれど、それが一転、“売ることにした”となりましてね。各社は物件所有者の写真を含めた資料一式を手に入れたうえで、まずは身元確認のため、地区担当者を近所に走らせたのです」

 とは、不動産関係者だ。

「そもそも、彼ら地区担当者は『本物』とは会っていますから、出回っている写真が『偽物』だということはすぐにわかる。更に念のため、その写真を手に近所を回っても、“これ、違うよ”と言われ続けた。当たり前だよね。『本物』は背が低くて品の良い感じなんです。積水の地区担当者も他社と同じく、“本物じゃない”と報告をあげましたが、最終的に無視されたのです」(同)

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