栄和人元監督語る「許されるなら日本の復権に尽力したい」 パワハラバッシングを振り返る

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復権に尽力を

 8月末付で旧・中京女子大時代から22年間、お世話になった至学館大を依願退職しました。パワハラ騒動が起こった時、週刊新潮も含め、マスコミの取材攻勢を受け、それはレスリング部以外の学生にまで及んだ。学生、学長や他の教職員に、これ以上迷惑をかけたくないとの思いで辞表を出しました。

 ただ、谷岡郁子学長は、告発の直後に会見して私を擁護してくださった。

「伊調馨さんは選手なんですか?」との発言がメディアから叩かれましたが、内情を知る者から見れば決しておかしな発言ではありません。当時、馨選手は選手登録していませんし、周りに「東京オリンピックは目指さないと思う」と言っていました。ALSOKの監督も「やらない」と話していた。社内でも選手契約から一般社員契約に変わって広報部の所属になり、協会にも報告しています。

 谷岡学長は、騒動直後のワールドカップの代表に選ばれた私の長女の希和を「不当選出」と非難するメディアに対しても怒りました。実力があっても、私の娘という理由だけで涙ながらに辞退を申し出た姿を見て、谷岡学長は会見を決意したのです。選手を守るための勇気ある行動で学長ほどアスリートファーストに徹しているトップはいないと思います。

 その学長がせっかく復帰の機会を作ってくださったのに、6月の全日本選抜での大会後、私の不徳で大学監督を解任されました。

 しかし僭越ながら、私の指導を望むコーチや選手も少なくないと聞きます。8月のアジア大会では、リオ金メダルの(川井)梨紗子(62キロ級)がまさかのフォール負けをするなど、日本代表女子は優勝者ゼロと不振で「栄さんが現場にいないからだ」と言ってくださる人もいる。

 もし許されるのなら、襟を正し、もう一度レスリング指導の現場に戻り、微力ながら日本の復権へ力を尽くしたいです。

 パワハラにもいろいろあるでしょうが、チーム全体への影響を考えての私の馨選手や田南部コーチへの発言はここまで貶められるに値する内容でしょうか。

 これでは上司は、怖くて部下に何も言えなくなります。

 第三者委員会は告発の根幹部分は否定したのに、マスコミはそこを無視して、一方的に私に「悪人」のイメージを植え付けました。

 私の元を離れても、馨選手を五輪で勝たせるために至学館大の選手に練習相手をさせ、懸命に協力をしてきました。選手村でも一緒に食事をし、「馨、しっかり食べたか?」とか会話をしたりしていたのに残念です。

 今後、裁判を通じて、事実無根の濡れ衣を晴らすと同時に、私がどういった思いで彼女に指導を行ってきたのかについても訴えていきたいと思っています。

聞き手:粟野仁雄(ジャーナリスト)

週刊新潮 2018年10月25日号掲載

特集「大悪人にされた『栄和人』が独占初告白! 『伊調馨』『田南部コーチ』にこれだけは言いたい」より

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