“細かい骨折”が強くする「骨粗鬆症」予防の運動術 カギは1日15分の日光浴
患者数およそ1300万人とされる骨粗鬆症だが、自覚症状はほとんどない。知らず知らずのうちに骨密度が低下し、気付いた時には発症、最悪の場合「早死に」という恐ろしい病気なのだ。これを防ぐためには、まずは適切な食事と運動。本稿では「骨貯金」を増やす毎日の運動法をご紹介したい。
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国立長寿医療研究センター病院の骨粗鬆症科医長・渡邉剛氏は、
「骨密度を上げるには、ある程度の負荷をかけなければ骨は強くならないという研究結果が出ています。実は負荷をかけると骨は細かい骨折を起こしますが、それを修復するため骨細胞が働いて逆に強くなるというメカニズムがあるとされています。そのため、負荷の高い運動は骨の修復力を引き出すための、必要なプロセスとお考えいただければと思います。ジムにあるフットプレスなら、ややキツイかなと思えるくらいの、習慣的に継続できる負荷が目安で、男性だと65歳くらいまではやや強い負荷をかけて骨を強くする。それを超えたら、30分から1時間程度の散歩など、軽い運動に切り替えた方がよいでしょう」
そのワケはといえば、
「骨密度は男女とも40代までは低下することはありません。個人差はあるものの、男性は60歳前後から骨密度の低下が年1%続き、一方の女性は閉経後、年2~3%ずつ低下する傾向が10年ほど続きます。その時点で骨密度は20~30%ほど低下して、以降は男性と同じく年1%のペースになる。その状態で負荷をかけると骨折するリスクも高まりますから、必ず医師と相談の上でトレーニングの内容を決めてください」
骨体操
日本骨粗鬆症学会評議員で伊奈病院整形外科部長の石橋英明氏は、こんな「骨体操」を推奨する。
「よくスクワット、片脚立ち、かかと上げをお勧めしています。これは、加齢とともに足腰が弱くなるロコモティブシンドロームの予防の運動ですが、骨粗鬆症や転倒予防にも有効です。かかと上げは、ゆっくりかかとの上げ下げをしてふくらはぎの筋肉を強くする運動ですが、50代までの方は、かかとを下げる際にトンとかかとをつく「かかと落とし」も良いです。こうした高負荷、衝撃運動は骨を強くする効果が期待できますが、膝や腰に痛みを感じる方もいるので注意が必要です。60代、70代の方も徐々に回数を上げていくようにして、やってみるのも良いことです。痛みが出ない範囲で1日10回、15回と徐々に回数を増やしていき、1カ月後に1日50回できるようになれば、立派な『骨体操』になるでしょう」
激しい運動が難しい方にはウォーキングを勧めるが、それにはこんな利点もあって、
「骨に必須で、がん予防にも重要なビタミンDは、経口摂取できなくても、日光を浴びれば体内で合成されます。日照量の多い5月から9月までは、1日15分くらい日の光に当れば十分だと思います。ただし、冬に向かうこれからの季節だと、日光だけでは不十分ですので、ビタミンDを多く含む食品をとることを心がけましょう」(同)
さっそく今日から実践してみては如何だろう。