東大生の3人に1人が子供時代に通っていた! テレビCMでお馴染みの「教室」

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東大生の習慣とは

 世界ランクは低下している。変わり者だとか頭でっかちだといった評価もある。それでも腐っても鯛というか、東大ブランドは健在だ。東大生がフィーチャーされるテレビ番組は多いし、低偏差値の高校生が東大を目指す「ドラゴン桜」も続編が現在「週刊モーニング」で連載中である。

 子供を入れられるものなら入れたい。そう思っている親御さんも多いことだろう。

 では、そのために必要なことは何か。「好成績」と言ってしまえば身もフタもない。

 育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は数多くの東大生を取材するなかで、一つの傾向に気づいたという。それは高校生になる前に通っていた、ある塾の存在だ。以下、おおた氏の新著『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』をもとに見てみよう(引用はすべて同書より)

 きっかけは東大の中でも最難関である理科III類の合格者たちへの取材だったという。2018年の理III合格者100人のうち、鉄緑会という塾の出身者は何と61名。圧倒的なシェアを誇るのだ。

 もっとも、ここで触れたいのは鉄緑会のことではない。そもそもこの塾自体が、お金を払えば入れるような類のものではなく、入るのには一定以上の学力が求められる。鉄緑会から東大合格者が多いことには不思議はない。

 おおた氏が気づいたのは、その前段階のこと。もっと身近な塾の存在だ。

「少なくとも私が話を聞いた範囲では、およそ3人に2人が公文式経験者だったのである。テレビCMでおなじみのあの『KUMON』である。

 そこでさらに調査した。『東大家庭教師友の会』の協力を得て、現役東大生100人を対象にインターネットでアンケートを採った。すると公文式経験者が34人いた。およそ3人に1人の割合だ」

学習習慣が身に付く

 もちろん、これだけでは母数が少なすぎる。その点はおおた氏も認めつつ、長年の取材経験からこう述べる。

「しかし、実際に出会う東大生の公文式経験率は高く、その多くが『公文式が万能だとは思わないけれど、役には立った』という主旨のことを言う。4人の子供を東大理IIIに入れたことで有名な『佐藤ママ』は、浜学園→鉄緑会の塾歴社会王道コースの手前で、やはり子供たちを公文式に通わせていたという」

 言うまでもなく、公文はどこにでもある教室だ。日本全国に現在1万6千以上も存在している。

「子供を対象にした教室で主に取り扱うのは算数・数学、国語、英語の3教科。十数人の東大生に直接話を聞いた結果からすると、国語の評判はさほどでもない。英語は最近、イー・ペンシルという電子機器を教材に連動させてから学習効率が格段に上がり、受講者が増えているようだが、現在の東大生が通ったころにはそのような革新的な機器はなく、公文式の英語が役に立ったという返答はわずかだった。『やってて良かった!』というのは、やはり圧倒的に算数・数学である」

 実際に多くの人が公文式と聞いてイメージするのも、基本的な計算を教えてくれる教室というところではないだろうか。

「教室に通うのは週2回と決まっている。(略)好きな時間に教室に行って、決められた枚数のプリントを終えたら、いつでも帰宅していいしくみだ。教室滞在時間は1教科あたりおよそ30分。3教科であれば約1時間半、教室でプリントと格闘することになる。

 解き終わったら指導者に採点してもらう。100点が取れるまで何度でもやり直す。どうやって解けばいいのかは基本的に教えてもらえない。プリントの例題を見ながら自分で気付くしかない。『教えてもらう』受け身の学習ではなく、『自学自習』の姿勢を身に付けさせるのが公文式の狙いだ。

 宿題も出る。教室でこなすのとほぼ同量のプリントに、毎日取り組まなければいけない。そうやって家庭での『学習習慣』が身に付く。むしろ本来の狙いはそこにある。家庭での学習をベースとして、正しく学習が進められているのかをチェックするために週2回、教室に通うのだ」

弱点もある

 こうして物心つくころから公文式の学習法に慣れると、「与えられた課題はとにかくやるもの」という考えが染みつき、面倒くさくても逃げずに課題に取り組む忍耐力も鍛えられる、そして計算力に代表される処理能力も高くなる、とおおた氏は分析する。

 そして、実はこれは受験強者に求められる3条件にぴたりと合致するのだという。

「大量の課題をこなす処理能力と忍耐力、与えられたものに対して疑いを抱かない力である。幼少期から公文式に通うことで“受験エリート”に求められる能力の土台ができるのだ」

 もちろん、いいことばかりではない。弱点もあるようだ。土台を築くことはできても、「思考力は身に付かない」という声も多いのだという。また、毎日決まった量のプリントを家庭でやらせるのは親の仕事だが、それはなかなか骨の折れる作業なのだそうだ。ここでつまづくと、かえって勉強嫌いになりかねない。

 効果も実績もあるとはいえ、当然のことながら「魔法の教室」ではないのである。おおた氏は「要するに、公文式を使いこなせるならば、家庭の教育力も高いということ」と分析している。

デイリー新潮編集部

2018年10月26日掲載

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