福原愛引退 日中でのイメージ戦略に見る本当の「強さ」とは
なんで女性の体育教師って髪が短く、化粧っ気がなく、男言葉でしゃべる人が多いのか。そして化粧をしていたり、いい香りのする女生徒を目の敵にするんだろう。私は小中高と、必ずこのタイプの女性体育教師がいたので不思議に思っていた。あと、オリンピックに出る日本の女性選手の多くがショートカットなのも疑問だった。特にバレーボールのような対戦競技だと比較しやすいが、外国選手はポニーテールだったりパーマがかかった髪型も多い。でも日本勢は短髪だらけだな、と思う。もちろん髪が長いと目に入ったり、他人に当たってしまう問題もあるだろう。でも理由はそれだけじゃない気がする。私が出会ってきた女性体育教師たちは、「おしゃれに気を使うチャラチャラした女がスポーツをやれると思うな」と口にしていたから。
前段が長くなったが、スポーツ選手であることと女性らしさのバランスをとるのは、日本ではなかなか難しいように思える。でも上手くとっていた代表格の一人が、福原愛ではないか。最後の引退会見も、華やかなワンピースに束ねた巻き髪。会見場の壁紙の柄までファンシーだった。宮里藍や浅田真央らは引退会見時、モノトーンの装いかつシンプルな背景だっただけに、福原選手の女子力の健在ぶりを感じたものだ。
愛らしいルックスと努力を重ねるいじらしい姿。勝てずに涙をこぼす幼い頃から、日本中が親のような気持ちで見守ってきた福原選手。反面、小さい頃からマスコミが密着していたことで、周囲が求める「望ましい女性スポーツ選手」という空気を読み取らざるを得なかっただろう。彼女の可愛さは、いつでもスポーツ選手として、そして「みんなの愛ちゃん」として許される範囲に収まっていた。北京五輪あたりから髪を伸ばして編んだり、髪留めやアクセサリーをつけ始めたものの、年頃の女性ならではのおしゃれ心として微笑ましく思えたものである。
けれども無意識のうちに、「おしゃれも恋愛も二の次で、練習に打ち込む純粋な姿」をずっと求め続けてしまう人も多かったのではないか。リオ五輪でブランド物のピアスやネックレス、10を超える髪留めにデコネイルをしてきた時、批判も上がった。団体戦でのミスや、開会式での恋人との自撮り報道もあり、「チャラチャラしているから勝てない」という論調があったのを覚えている。女性アスリートの運動能力と女子力は、かくも相反すると言われ続けてきた。事実は、個人戦4位、団体戦銅メダルという戦績だったというのに。
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