朝ドラ「まんぷく」序盤は絶好調!~要因は視聴者を満腹にさせるバランス感覚~

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第3週は反戦色

 第3週22.3%は、第1週を超えてきた。各曜日も全て第2週を上回った。明らかに「まんぷく」は、序盤で軌道に乗ったと言えよう。

 この週のタイトルは「そんなん絶対ウソ!」。“軍事物資の横流し”容疑で萬平が憲兵隊に連行される。彼の無実を信じ、福子はまわりを巻き込み救出に成功する。そして2人の強い気持ちが、反対していた母・鈴の気持ちを動かした。毒親としか見えなかった鈴の「気持ちよく認めてあげるわ」は、さわやかな感動を呼んだ。

 こう書くと、数々の困難を乗り越えた末のハッピーエンドに見える。ところが実際は、戦争が人々の暮らしに色濃く影を落としていく展開でもあった。福子の背中を押した真一にも、味方になった忠彦にも、赤紙が届いてしまった。

「赤紙への、福ちゃんの棒読みの“おめでとうございます”が胸に刺さった。何て辛い、本心と真逆の台詞だろう」

「戦争を知らずに過ごせてる事に感謝だなぁ。 息子に赤紙とか…考えただけでも恐ろしい。一度きりの人生を戦争で台無しにされてしまった人たちがたくさんいたんだな」

「2人とも無事に帰ってきて‼️」

 今年は夏クールに放送された「この世界の片隅に」でも、戦争を大上段から描かない手法で説得力を感じた。自分の“居場所”をもとめて必死で生きている人々の暮らしを、戦争がどう破壊していったかを描いた作品だった。

 今回の「まんぷく」序盤も、普通の暮らし・人を想う気持ちなどが、戦争により踏みにじられていく様子をバランスよく散りばめている。

 日本では3年前、ほとんどの憲法学者から違憲とされた安保法制が、強引に国会で決められた。そして3選を果たした安倍首相は今、憲法改正に強い意欲を見せている。

 時代状況は、「まんぷく」の主人公が育った頃に似始めている。そんな中でNHKが朝ドラの中で、反戦メッセージを潜り込ませたのには意味がある。NHKの報道は、岩田明子記者に象徴される安倍政権追認の姿勢が目立つ。その中でドラマが別のスタンスをとっているからだ。

 その反戦色が色濃く出た第3週が、序盤のホップ・ステップに次いでジャンプ役を果たしたのは注目に値する。勝因は運動論的に声高に主張しなかった点だろう。

 同様に人物設定・物語の展開・描くメッセージなどが、このドラマではバランスが絶妙だ。序盤で「朝ドラらしい朝ドラで安心した」「安定感・安心感ある」と思わせたことは大きい。

 最初の3週を見る限り、「まんぷく」は多くの視聴者の心に満腹感をもたせた。この調子でいけば、2010年代でトップとなった「とと姉ちゃん」を抜くことも十分ありうる。今後の展開に期待したい。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる~」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2018年10月26日掲載

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