“タダ同然で中高一貫教育”で人気沸騰! 知らないと損する「公立中高一貫校」ガイド
「結果偏差値」は上昇
そこでさらに倍率が跳ね上がりそうなものだが、そうはならなかった。開校当初は、ろくな対策もしないまま、「ダメもとで受けてみる」層が多かったが、このころになると「ちゃんと対策をしないと受からない」ことが認知され始め、受験者数は増えなかったのだ。
その分、受験者の本気度は上昇し、倍率は横ばいでも難易度は上がる。白鴎ショック直前の11年と12年で、入試難易度を示す「結果偏差値」を比べると、軒並み上昇していることがわかる(掲載の表)。小石川の65という偏差値は、男子で言えば早慶の付属校や渋谷教育学園渋谷、海城といった最難関私立中高一貫校に匹敵する。女子なら吉祥女子、鴎友、白百合などの超人気進学校を凌駕する。
公立中高一貫校は、入学試験に当たる「適性検査」が、一般的な中学受験用の模試の問題傾向とはまったく違う。このため、四谷大塚の模試の偏差値は参考程度に見るべきだが、それでも公立中高一貫校の難関化が進行していることは間違いなさそうだ。当然、「出口」の成績も伸びる。18年には都内の公立中高一貫校11校から、合わせて54人もの東大合格者が出た。
同様に、東京都以外の多くの府県でも、公立中高一貫校が、地域の進学校勢力図を書き換える台風の目となっている。
公立中高一貫校の登場は、12歳での選択肢を、家庭の経済状況に関係なく増やすものではあった。だが、思わぬ形で選択を迫られるケースも生じた。地域で人気の公立高校が中高一貫校化することにより、高校からの入学枠が減少したり、高校から入学できなくなってしまったりしたからだ。
公立中高一貫校にも、学校教育法上、「中等教育学校」「併設型」「連携型」の3種類がある。
違いを大雑把にいえばこうだ。中等教育学校は中学からしか入学できず、校名も「○○中等教育学校」と呼ばれる。併設型は高校から入学する生徒もいて、「○○中学校・高等学校」や「○○高校・附属中学」という名称になる。一方、連携型は、もともとある別個の中学校と高校で人的交流を図るタイプ。一部の生徒が簡便な試験だけで該当高校に進学できるという特典はあるが、一般的な中高一貫校のイメージとは違う。
16年度の時点で、公立中高一貫校の設置数は全国で、中等教育学校が31、併設型が87、連携型が80。実質的な公立中高一貫校は118校ということになる。
私立中高一貫校との最大の違いが入試の形態である。公立中高一貫校の入学者選抜では、たてまえ上「学力試験」を行ってはいけないことになっており、実質上の入試を「適性検査」と呼んでいる。そのために、私立の「中学受験」と区別して、「中学受検」と書かれることが多いが、ここでは便宜上、いずれも「受験」と表記する。
「適性検査」は、あくまでも「学力試験」ではないために、算数や国語といった教科の枠は設けられていない。また、単なる知識を問う一問一答形式の問題でもなく、グラフから読み取れることを記述させたり、ほとんど自由作文のような問題が出題されたりする。OECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)の出題形式に似ている部分も多いことから、「PISA型問題」と呼ばれることもある。
これが、「知識の量ではなく、読解力や思考力、表現力そのものを試しているので、塾に行かなくても合格できる」「中学受験塾の詰め込み教育では対応できない」「開成に合格できる子でも公立中高一貫校に合格できるとは限らない」と、評判になった。
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