「働き方改革」が日本を亡ぼす――当の厚労省が実現できず

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存続もできなくなる

 そもそも、なぜ働き方改革が必要だと考えられたのか、ここで原点に立ち返っておく必要があるだろう。

「背景には、ネットやSNSで、労働環境が騒がれやすくなったことがある。企業の最大の関心事は労働力の確保で、今後、ルーティンワークがAIに代替されるようになると、よりクリエイティブな人材を集めないと、ビジネスモデルに問題がなくても、発展どころか存続すらできない。企業はそこまで追い詰められています」(横山氏)

 ところが、電通の社員だった高橋まつりさんの過労自死や、ヤマト運輸のサービス残業問題を経て、長時間労働に反対する世論が高まると、働き方改革イコール残業時間の削減というムードに。その結果、定時に帰る代わりに家で仕事をしたり、始発で出勤したりという、笑えない喜劇が方々で演じられることになった。

 横山氏が続ける。

「仕事を覚えるのには時間がかかるのに、“時短”と言われると、人が育つのに余計に時間がかかってしまいます。働き方改革を行うなら、まず手順を考えてほしい。組織には組織の目標があるわけで、それが達成できていれば、1日に10時間かけていたところを9時間、8時間でできるように、徐々に生産性を上げていくのです。しかし、結果が出ていないのに、労働時間を短くすることは不可能。10の工程が必要なものを“8にしろ”と言われてしまうと、モノが完成しません」

 まず、厚労省こそが生産性向上のモデルケースになるべきだろう。だが、現実には、日本中がこぞって不可能に挑んでいる。そんなことを続けるかぎり、企業は業績を上げることも、人を育てることもできず、ますます「発展どころか存続すらできない」。本来の趣旨と真逆の方向に向かっても、誰も止められない働き方改革。喜劇のクライマックスは、いよいよ笑えない。

週刊新潮 2018年10月18日号掲載

特集「過ぎたるは及ばざるがごとし」より

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