「パワハラ」なぜ増えた? 15年で相談件数は10倍以上 “加害者にされた”訴えも
セクハラは減少傾向でも…
とはいえ、急に日本人が意地悪になり、職場でパワハラを働くようになったとは考えにくい。さる労働問題評論家が補足する。
「いじめや嫌がらせは昔から相当数あったはず。パワハラやセクハラという言葉が一般に認知されるにつれ、被害を受けたと感じた人が、声を上げやすくなったのだと思う。SNSで気軽に発信でき、“#MeToo”運動のように、被害者のカミングアウトに対して同情が寄せられやすくなった。そんな世相の変化が影響していると思われます」
また、セクハラについては、先の厚労省雇用機会均等課の担当官によれば、
「1999年に男女雇用機会均等法で規定されて以降は、相談件数も09年の8075件が、17年には6808件になるなど、減少してきている」
というが、パワハラについては、まだ法整備が追いついていない。
「12年、私ども厚労省の円卓会議ワーキング・グループが、パワハラに関する報告書をまとめました。そこではパワハラは、地位だけでなく専門知識や職場内の優位性を背景に“業務の適正範囲を超えて精神的、身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為”と定義されています。これを厚労省のHPなどで紹介し、注意喚起していますが、実態はなかなか改善されません。いま、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会で、法制化を含めて有効な手立てがないか、有識者に検討していただいています」(同)
それは裏返せば、法制化にはまだ時間を要し、それまでは定義があやふやなまま、あれもこれも「パワハラだ」と声を上げられやすい環境が続く、ということ。被害を受けた人が救われやすいのはいいが、誰もがいつでも“加害者”になりうるということでもある。
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