綾瀬「ぎぼむす」VS石原「高嶺の花」の明暗、外見の美しさを強調し過ぎて陥ったワナ
両ドラマの満足度
次に両ドラマの評価を、満足度でみてみよう。
テレビの視聴状況を独自に調査しているeight社の「視聴しつ」は、関東の1都6県で10~70代の960人を対象に、自発的にみたテレビ番組の満足度評価と自由記述を集めている。ここでも両ドラマは大差となった(図2)。
7月中に序盤を視聴して調査に答えた人は、両ドラマとも220~230人。人数ではあまり違わなかったが、5段階での満足度評価は、『ぎぼむす』の4.17に対して、『高嶺の花』は3.594と大差となった。
『ぎぼむす』は、同期全ドラマの中で『グッドドクター』(フジテレビ系)に次ぐ2位。『高嶺の花』は最下位だった。しかも中盤に入った8月の成績では、『ぎぼむす』は満足度を4.358に上げ、全ドラマの首位に躍り出た。ところが『高嶺の花』は、満足度を3.74と約0.15上げたものの、順位は最下位から脱出することが出来なかった。
両ドラマを見た人の数は、『ぎぼむす』は大きく変わっていないが、『高嶺の花』は8月に2割弱減っている。連続ドラマの満足度調査では、視聴者数が減ると「ドラマを見る価値あり」と考える人だけが回答者として残るので、満足度は上昇する傾向にある。
この法則に従うと、『ぎぼむす』は回答者数が変わっていないのに満足度が高くなったので、内容が良くなったと感ずる人が増えたと推察できる。いっぽう『高嶺の花』では、序盤で「見る価値なし」と判断した人がいなくなった上での数値上昇なので、内容が良くなったとは言い切れない。
このことを男女年層別で詳しく見ると、両ドマラの正しい評価のヒントが得られる。両ドラマについては、M2(男35~49歳)とF3(女50歳以上)で、評価が大きく分かれたからだ。
『ぎぼむす』ではM2もF3も、序盤より中盤で満足度が上がった。ところが『高嶺の花』で、両層とも評価が下がった。中でも特徴的なのは、『ぎぼむす』ではM2の回答者数が増えたにも関わらず評価が上がった。逆に『高嶺の花』では、回答者数が減ったF3の評価が下がってしまった。ともに一般的な傾向と逆になっており、前者は回が進むと共に評価が上がり、後者は徐々に評価が下がっていたと考えられる。
視聴率など量的評価は、満足度など質的評価と見事にリンクしていたのである。
視聴者の声
このことは「視聴しつ」が集めた視聴者の自由記述でも裏付けられる。
『ぎぼむす』については、序盤から評価する声が男女年齢層を問わず多かった。
「今までにない設定のドラマで面白い」(男17歳・満足度4)
「キャリアウーマンが娘と親子になっていく様子を描いただけのドラマかと思っていたら、色々と深いところもあり笑えるところもあり、毎週楽しみにしています」(女17歳・満足度5)
「義母のやること、話し方が今までのドラマにはなかった、面白さとまじめに一生懸命取り組む姿勢に感動する」(女62歳・満足度5)
「綾瀬はるかのふんわりしたイメージとは違った役が面白い」(男39歳・満足度5)
主役の綾瀬はるかを初めとする出演者の演技に対する評価が高い。また設定、ストーリー展開、硬軟絶妙に織り交ぜた演出への好感度も抜群だ。
しかも中盤に入ると、テーマや微妙な表現についての評価も、どんどん上がっていく。
「心の機微を丁寧に描いているところがいい」(男53歳・満足度5)
「初めはこのドラマどうかな??と思ったけど、どんどん面白くなって今じゃ早く次が見たい!」(女47歳・満足度5)
「家族のあり方がいろいろあると実感出来る」(男27歳・満足度5)
いっぽう『高嶺の花』は当初、石原さとみ人気で一定数の視聴者を集めた。ところが序盤から中盤にかけて、厳しい声が増えていった。
「1話だけ見たけど、見るのをやめました」(女16歳・満足度2)
「内容がよくわからなかった。石原さとみの無駄遣い」(女18歳・満足度1)
「石原さとみの演技が少し野蛮な感じがして引いた」(女45歳・満足度3)
「野島伸司終わった。石原さとみを見るだけに見てる」(男46歳・満足度2)
「石原さとみの上品さがあまり感じられないのが残念」(女54歳・満足度3)
明らかに石原さとみと役柄のミスマッチなど、違和感を抱いた人が多かった。設定もストーリー展開も評価できないとした人が少なくない。
打ち上げの席上で「全責任は私です」と彼女は涙ながらに謝っていたが、実際には起用方法も含めた全体の設計ミスを感じた視聴者が多かったようだ。
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