「いきなり!ステーキ」は戦々恐々? 「牛角」創業者が“1人焼肉専門店”で殴り込み

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類似店が続々と誕生!?

 東京・JR新橋駅近く、「焼肉ライク」という“1人焼肉店”が大きな注目を浴びている。テレビの取材も少なくなく、専門家も「今年下期から来年にかけて、外食業界を席巻する」と太鼓判を押す。人気の理由を探った。

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 店のセールスポイントはシンプルだ。1人客をターゲットとし、可能な限り肉の値段を下げる――その分、メニューは厳選されている。

 例えば冷麺やユッケなどは最初から用意していない。基本は肉と白飯、ワカメスープ、キムチだ。ナムルやチョレギならサイドメニュー。アルコールは後述するが、日本酒を置かないなど、最小限の品ぞろえと言っていい。

 要するに長居する店ではないのだ。ファミリー層を狙う住宅街の店舗や、繁華街の高級店とは真逆のスタイル。「焼肉ライク」も公式サイトで堂々と「焼肉のファストフード」と宣言している。

 具体的にメニューを見てみよう。公式サイトにも公式Facebookにもメニューは掲載されていない。そこで「食べログ」に投稿されている写真を参考に、主なセットメニューを紹介する。全て「ごはん・キムチ・スープ付き」だ。値段の高い順に並べており、いずれも税別。単位などの表記は弊社規則を優先した。

◇牛タン【ネギ塩レモン】&和牛上カルビ【塩】セット
 100グラム 1260円
 200グラム 1960円

◇うす切りカルビセット【タレ】
 100グラム  530円
 200グラム  860円
 300グラム 1190円

◇豚トロ【タレ】&ホルモン【味噌だれ】セット
 100グラム 660円
 200グラム 960円

 対して「カスタムメニュー」では肉を自由に注文することが可能だ。100グラムなら、牛タン780円、ハラミ530円、カルビ480円、ホルモン380円――など9種類が用意されている。ハーフ50グラムの注文も、定食との組み合わせもできる。

 アルコールは、グラスワイン(赤)550円、レモンサワー500円、生ビール480円、芋焼酎480円、ハイボール400円、ウーロンハイ400円の6種類。繁華街にある一般的な焼肉店のように酒類に注力していないのは明らかだろう。

 同店を訪問して実際に食べた経験を持つ、フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏(60)は「まさにコロンブスの卵です」と指摘する。

「1人焼肉をたまにやっていた人は意外に多いと思います。ただ私もそうですが、4人掛けのテーブルを1人で独占する罪悪感がネックでした。焼肉店はグループやファミリー客をターゲットとし、満席にならなくとも経営が成り立つ戦略を採ってきました。ところが『焼肉ライク』は盲点を突き、回転率と満席率を重視することで客単価を1000円台に設定しました。1人焼肉の潜在的なニーズを考えると、これは外食産業における今年後期の大ヒットとなり、来年には、業界を席巻する可能性は充分にあると考えています」

 運営するのはダイニングイノベーション(東京都渋谷区)で、代表取締役会長は西山知義氏(52)。外食産業に詳しい方なら、焼肉チェーン店「牛角」の創業者としてご存知だろう。

 西山氏は東洋経済の取材に応じており、「いきなり!ステーキ」(ペッパーフードサービス/東京都墨田区)の成功に触発された経緯を率直に明かしている(「牛角創業者が仕掛ける『1人焼き肉店』の勝算 業態開発のヒントは「いきなり!ステーキ」東洋経済ONLINE:2018年9月1日)。

「『いきなり!ステーキ』は当初、価格設定を牛肉1グラム5円とし、客単価2000円前後で大変な人気となりました。ところが現在、スタンダードなもので1グラム6.9円となっていて、客単価は2000円をはるかに超えていることでしょう。『焼肉ライク』の客単価はおそらく1200円あたり。一般的に焼肉はステーキよりもおなじみで、お手軽な価格であればいつでも食べたいのではないでしょうか。私がこちらで14時ごろに食事をしていたところ、中高年の女性が入ってきて『4人で予約したいんですけど』と言ってました。こちらでは予約は取らないのですが、おいしそうな焼肉の写真にとんかつ屋さんなみの価格が表示されていると、どんな人も興味を抱かれることでしょう。老若男女、広範な顧客層を見込めます」(同・千葉氏)

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