根本治療が見えてきた「アルツハイマー」 ノーベル賞の技術が完成させた最新検査

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脳を若く保つコツ

 糖尿病の患者がアルツハイマーを発症するリスクは、そうでない人の2倍以上。これはつまり、糖尿病の予防に励むと、同時にアルツハイマーも防げるかもしれない、ということである。

「1日30分程度の有酸素運動を2日に1回行うと、糖尿病とアルツハイマーの予防になることが分かっています」

 そう語るのは、東京医科歯科大学認知症研究部門特任教授の朝田隆氏。

「アメリカの研究では、ウォーキングの場合、同行者とだらだらお喋りできるスピードではダメで、喋れない程度の速さで歩くと予防につながると報告されています。運動を続けると、インスリン様成長因子のIGFが分泌されます。IGFは、脳由来の神経栄養因子の分泌を促進し、脳の神経細胞の働きを良くします」

 アルツハイマーの予防法としては他に「脳トレ」が知られているが、

「日本で売られている脳トレグッズはエビデンスがないものがほとんどです」

 と、朝田氏。

「おすすめなのはアメリカのオンラインゲームの『ブレインHQ』です。記憶力や集中力を使う20種類以上のゲームで構成されていて、ゲームなので退屈せずに出来ます。しかもその予防効果にはエビデンスがあり、医学雑誌に論文が掲載されているのです」

 アメリカ国立衛生研究所が65歳以上の約2800人に行った調査では、ブレインHQを使うグループは何もしないグループよりも認知症発症リスクが約48%も低下したという。

 ちなみに日本では、コーヒーメーカー「ネスレ」のサイトで、ネスレウェルネスクラブの会員登録を行うと、月額1080円(税込)で日本語版の「ブレインHQ」を利用することが出来る。

「麻雀などの頭脳ゲームにも一定の認知症予防効果があります」

 と話すのは、脳科学者で諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀氏である。

「以前、日本健康麻将協会の人たちから頼まれて麻雀中の脳活動を調べたことがあるのですが、面白い結果が出ました。麻雀中に深く考えこんでいる時には、前頭前野という、記憶や情報を一時的に組み合わせて答えを出す部位の活動が高まっていたのです。また、頭頂側頭接合部という、想像力に関わる部分も顕著に活発化していました」

 篠原氏によると、麻雀などのギャンブルに興じる群のほうが、しない群に比べて脳の働きが低下しない、というデータもあるという。

「これは、わくわく、どきどきするとアドレナリンが分泌され、記憶障害を抑制する効果があるためと思われます。わくわく、どきどきしながら日々を過ごすのは、脳を若く保つ重要なコツなのではないか、ということです」(同)

 年齢を経ても心豊かに過ごすことが出来れば、『恍惚の人』で描かれたような“絶望”を回避できるかもしれない、というわけだ。

週刊新潮 2018年9月27日号掲載

特集「根本治療が見えてきた『アルツハイマー』」より

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