食欲も性欲も、人間の自然な欲求なのに… 壇蜜×筒井ともみ「食べる女」公開記念対談(下)

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「みんなが食べてるから」じゃつまらない

筒井 私はとにかく何でも一度食べてみるの。冬瓜のワタとか、普通は捨ててしまうような部分も意外にいけるのよ。みそ汁の具にしたり。

壇蜜 こんど試してみますね。ほうれん草の根元もよく洗っておみそ汁に入れるとおいしいし。年を重ねると味覚の幅が拡がるのがうれしいですね。私は最近、苦手だった黒酢やおからにはまっています。20代の頃はなんでこれが苦手だったんだろう、って不思議で。

筒井 舌の感覚も変化していくよね。男の趣味が変わっていくみたいにね。

壇蜜 そうかもしれませんね。

筒井 やっぱり、心と体の声に耳をかたむけて、つねに自分がいまどんなものを食べたいのか、っていうのを意識するのが大事だと思うの。「なんとなく」とか「みんなが食べてるから」じゃつまらない。

壇蜜 確かに。行列に並んでる人たちに「あなたはいま、本当にパンケーキが食べたいのですか?」と聞きたくなるな(笑)。

自分が欲しいものを考える

筒井 でも、自分の本当に欲しているものに気づくことって、意外とむずかしかったりする。

壇蜜 そうですね。私もとても疲れている時など、自分が何を食べたいのかわからなくなります。そんな時に、ある方から聞いて「使えるな」と思った方法があるんです。スーパーに出かけていって、何も考えずにカゴを持ってくまなく回るんですって。不審者と思われるぐらいに(笑)。食のイメージが具現化されている場所だから、そこで足を使っているうちに頭が活性化してきて、だんだん自分が本当に欲しているものに近づいていける。

筒井 なかなかいいアイデアね。食べものに関してもそうだし、性にしたって「自分はどんなセックスを望んでいるのか」って考えがあったほうがいい。どんな世界を望むかに通じていくから。

壇蜜 そうですね。食もセックスも「自分が納得している」というのがポイントなのかな、と思いました。私の場合は、かつては相手に合わせることに重きを置いていたから、セックスに対しても正直になれなかった。いまならきっと「私はこういうものが食べたくて、あなたとはこういう時間を過ごしたいの」って言えるような気がするな。

筒井 本当にそのとおり。でも、食べるものとちがって、セックスは相手があることだから、こうしたいと思ってもすぐ実行に移せるものじゃないんだけどね。お店みたいに「イマイチだから2軒目」ってわけにはいかないし(笑)。

壇蜜 (笑)。しかも私、最近はお腹がいっぱいになると眠くなってしまって、セックスどころじゃないんですよね(笑)。

壇蜜(だん・みつ)
1980年秋田県横手市生まれ。タレント。「サンデージャポン」(TBS)、ラジオ「壇蜜の耳蜜」(文化放送)などにレギュラー出演。著書に『たべたいの』(新潮新書)他。

筒井ともみ(つつい・ともみ)
東京生まれ。脚本家、作家。「響子」「小石川の家」で向田邦子賞を、「阿修羅のごとく」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。著書に『うつくしい私のからだ』(集英社)などがある。

週刊新潮 2018年9月27日号掲載

映画「食べる女」公開記念対談「壇蜜vs.筒井ともみ 『小泉今日子』『沢尻エリカ』も赤裸々だった『食欲の秋 性欲の秋』」より

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