過去には滝川クリステルとイベントも 獣医師が告発する「ピースワンコ」の偽善
集団リンチでほぼ毎日
私が想像もしなかったのは、犬たちの集団リンチの存在でした。狭い犬舎に閉じ込められている犬たちは、ストレスの極限状態にあります。だから、ほとんどの犬の便が軟便か未消化便で、施設全体に独特の発酵臭が立ち込めています。そして、みな日ごろから鳴き叫んでいますが、一部の犬がほかの犬の足や尻尾を踏んだりしたのを機に、全頭が弱い犬に突撃するんです。みんなイライラしながら生きることに必死で、自分の命を一番に考える。だから弱い犬を直撃するんです。
咬み方は、いわゆる本咬み。彼らは本能的に、犬の急所である首や内股を狙い、傷は深さ3、4センチに達して、頸動脈に穴が空いていることもある。または、圧迫死で外傷がないこともあります。シェルター内での死亡原因はほぼ外傷です。1日2頭死ぬ日もあれば、1頭も死なない日もありましたが、平均すると1日1頭は死んでいました。
もちろん、スタッフたちは、犬が死ぬたびに涙を流しています。そもそも、人の会話も聴き取りにくいほど多頭の犬が鳴き叫ぶ環境ではストレスがひどく、胃痛や食欲不振、不眠で医者にかかる人もいました。ストレスから「このままだと犬を蹴り殺してしまいそうだ」と言っていたスタッフは、実際に蹴ってしまって辞めていきました。私自身も、毎日犬たちが文字通り“犬死(いぬじに)”していくのに、獣医師として何もできない虚無感から、毎月、東京に戻るたびに精神的に不安定になり、自分でPTSDだと感じていました。
(2)へつづく
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