銀行口座を強制解約 「ヤクザに人権なし」が招く“犯罪のアングラ化”の未来

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犯罪のアングラ化

 先の溝口氏が指摘する。

「暴力団を抜けても、5年は暴排条例に縛られるので、辞めてもまともな仕事に就くことが難しく、更生の妨げになっている。本来、暴排条例は暴力団の活動を制限することが目的のはずです。にもかかわらず、暴排条例のせいで、辞めた後に生きていくことが難しくなっており、矛盾していると言わざるを得ません」

 暴力団対策法では、暴力団の存在を否定せず、法的に認めている。一方、

「暴排条例や条項は生活権を含む暴力団員の基本的人権を侵害しており、実質的に暴力団員の存在を認めていません。海外では、犯罪組織集団の結成、運営自体が違法です」(同)

 では、暴排条例などを厳密に適用する流れがこのまま加速すると、何が起こるのか。それは治安の悪化だ。

「公共の安全を考えた時、果たして良い方向に向かっているのか疑問です」

 と、溝口氏は言う。

「このままだと暴力団の規模が縮小していくのは間違いなく、そこだけ切り取ると良いことのように見えるかもしれません。しかし、一方で半グレと言われる組織犯罪勢力は、近年、勢いを増している。ここ数年の犯罪件数を調べると、オレオレ詐欺などの詐欺が増えて、恐喝が減っています。詐欺は半グレの中心的な収益源。恐喝はヤクザの三大シノギ(覚醒剤、賭博、恐喝)の一つです」

 先の山之内氏も、

「古今東西、薬物、売春、賭博、用心棒の需要はあり、そこに必ず犯罪組織が必要とされます」

 として、こう語る。

「ヤクザが衰退すれば、諸外国と同じように日本でも犯罪がアングラ化します。大阪のミナミでは、ここ数年ヤクザに力がなく、半グレがその役割を担っています。統制のとれない犯罪組織ばかりになると、最も手っ取り早い商売である薬物に流れる人間が多くなるのは確実。そうなると、これまで薬物の蔓延度が低かった日本も変わってくるはず。ちなみにメキシコでは、麻薬に関係する死者が毎年1万人以上も出ています」

 暴力団“締め付け過ぎ”の先に横たわる恐ろしい未来。薬物中毒者が巷に溢れれば、無辜の一般人や子供が犯罪に巻き込まれる確率が上がるのは自明である。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

特集「妻子にも人権はない!? 『暴力団』の『銀行口座』強制解約は正義か」より

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