ソープが銭湯に、紙カルテだから救えた透析患者… 北海道大地震“都市機能崩壊”の教訓

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ポリシーの紙カルテ

 近ごろでは珍しくなった氷屋が奮闘。昔のように、氷を冷蔵庫の代わりに使い、市場の高級魚を廃棄処分から救った――。こんな成功例の紹介は別の機会に譲り、人命にかかわる逸話を。

 アナログ方式が、人工透析患者を救ったという話である。透析患者が中心の「H・N・メディック新さっぽろ」の内科医、遠藤陶子さんが言う。

「うちの患者数は164人で、グループ全体では354人。地震があった6日、停電で透析ができないと判断し、朝から患者さんたちに電話をしたのです」

 人工透析患者が透析なしで耐えられる期間は、3日から1週間が一つのメド。

「なので、数日透析できないと、なかには命にかかわる事態を招く方が出るかもしれない。でも、いつ通電するか分からない。それで医師会と市役所、区役所にスタッフを走らせました」

 すると、その時点で透析可能な病院をとりまとめている医師にたどり着く。

「すぐさま教えてもらい、緊急性に応じて患者さんを割り振れたのです。うちもようやく7日の夜に通電し、翌8日、20名ほどが透析を行いました。各病院に散った患者さんには戻ってもらい、治療日程を説明できたのでよかったです」

 当然、患者の症状の度合いは様々である。

「そこで役立ったのが、紙のカルテです。もしもうちが電子カルテを使っていたら、データがまったく見られず緊急性を判断することもできませんでした。紙カルテという、一見、アナログなやり方がよかったのです。紙カルテは一種のポリシーのようなもので、電子にすると、医者は画面を見たままやりとりすることになります。だから、患者さんの顔を見なくなってしまう。紙カルテならば、しっかり患者さんの目を見て診察できますからね」

 患者にとっては、紙が“神”にも思えたことだろう。アナログの是非はともかく、教訓とすべきではないか。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

特集「『北海道大地震』の次は… 『本州大都市』震度7で何が起こるか!?」より

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