ソープが銭湯に、紙カルテだから救えた透析患者… 北海道大地震“都市機能崩壊”の教訓
寝静まった200万都市を大地震と全戸停電が襲い、大停電パニックが続いた北海道大地震。むろん生活インフラも崩壊。以下は、そんな機能不全の街で目にした、記憶に留めるべき出来事である。
ほとんどの信号機が消え、コンビニの陳列棚からは商品がなくなった。人々はスーパーに長蛇の列を作り、携帯電話の充電を求めて街をさまよう。“電源泥棒”などでの諍いも起きていた。
そんななか、地震発生翌日の7日。歓楽街のすすきので、1日限定で銭湯が営業していたことをご存じか。
ソープランドが、被災者にシャワーを貸し出したのだ。1回30分で、お値段500円。ふだんの「入浴料」からするとウン十分の一である。店内では“番頭さん”が利用客に話しかけ、
「きょうはヘンなことしちゃだめ。あしたは違うサービスもするからヨロシク」
こんな具合に、ちゃっかり“営業”していた。シャンプーやボディソープ、タオルに歯ブラシも揃っていて、携帯の充電も可能。つまり完全に手ぶらでシャワーを浴びられる。洗濯もままならない被災者にとっては嬉しいサービスだ。
ただし、浴室には例の椅子とマットが置かれ、1人での利用にはいささか広い。それを番頭さんに伝えると、
「あした来れば、もう1人、一緒に入れますよ」
と、ニヤリ。それは別途検討すると小声で応え、別のスタッフに1日限定開店の経緯を訊ねたところ、
「うちの女の子は一人暮らしが多いので、暗いうちから集まってきて、“避難所”になっていました。みんなで一緒に買い出しに行ったり風呂に入ったりもしたようで、それを聞いた店長が、“じゃあ、風呂を開放して銭湯にすればいいじゃない”と決断したのです」
SNSで情報を流すと、一気に拡散されたという。
「ニューハーフの男の子とその母親が来て“本当に助かりました。ありがとうございます”と頭を下げてくれた。大変だったけどそのときには心底、やってよかったと思いました」
客は、SNSを日ごろから活用しているような若い男女が中心。7日夕方の開店から2時間で30人以上とハイペースだったとか。
さて次は、SNSとは対極にあるアナログ方式が奏功した例を見てみよう。
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