北海道地震で不安視 銀座「ポルシェビル」「丸源ビル」はなぜ危ないか

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 大停電とは無縁の銀座でも、夜の蝶たちが気にするのは北海道のこと。身内はいるのか、無事なのか。そんな話も尽きてきた頃、囁き声で聞こえてくるのは、「ポルシェビル」と「丸源ビル」。いざ地震が起きれば、危ないというのだが、さて――。

 社交界で、知らぬ人はいないビルが二つある。名門クラブが入居する通称「ポルシェビル」。ショールームには高級外車が鎮座して、界隈で“ポルシェ”といえば、このビルのことを指す。

 片やこちらも老舗クラブが店子の「丸源ビル」は、うら寂れた廃墟のような佇まい。銀座に「丸源第15ビル」「丸源第31ビル」など幾つかの建物を持ち、全盛期は総資産1千億円超の富豪で知られた川本源司郎氏(86)がオーナーを務める。5年前、約10億円の脱税で逮捕・起訴された彼は、公判で容疑を全否定。判決は今年11月の予定だ。

 そんな話題に事欠かない二つのビルは、なぜ不安視されるのか。

 登記簿を確認すると、これらの建物は1981年以前の旧耐震基準によって作られたもの。築40年を超えていれば、震度7の地震で倒壊の危険もある。

 もっとも耐震工事を施していれば問題ないが、ポルシェビルのとある店で働く夜の蝶に言わせれば、

「工事をすれば、オーナーが休業期間中に店子へ営業補償を払うでしょ。水漏れが起きたクラブもあったけど、管理会社も細かい補修で、体裁を繕っているとか」

 なんてグラスの氷を摘まんでみては溜息をつく。

 かつて丸源ビルにいた別の蝶はこうも言う。

「リーマンショック以降、クラブの入れ替わりが激しくて、その度に内装工事を繰り返しているからね。だから、建物全体が相当ガタついてると思うのよ」

 そんな彼女たちの不安は、他所で地震が起こる度に大きくなり、行き場のない声は夜の街を漂うばかりだ。

 で、当の丸源ビルの川本オーナーに話を聞くと、

「ああ、耐震工事なんてやってないよ。なのにヒビのひとつも入ってないだろう。手抜きをしていないか、オレが建設中も鉄筋なんかをこの目でチェックしたから、何も問題なんてない。いつかさ、自分で集めた美術品の展示場を作る予定だよ」

 開いた口が塞がらない。まだしばらくは、銀座雀が鳴き止むことはなさそうだ。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

特集「『北海道大地震』の次は… 『本州大都市』震度7で何が起こるか!?」より

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