朝ドラ「そよ風の扇風機」 原案メーカー創業者が明かす“リアル”製作秘話
17日に放送されたNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で、主人公の鈴愛(永野芽郁)が幼なじみの律(佐藤健)とともに開発を進める「そよ風の扇風機」の姿が明らかになった。特徴的な二重構造の羽根をみてピンときた人も多いだろう。この扇風機のモデルになっているのは、家電メーカー、バルミューダの大ヒット商品「グリーンファン」だ。
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本ドラマに原案協力しているバルミューダの寺尾玄社長は以前、週刊新潮の取材にこう答えている。
「一昨年の秋頃、北川(悦吏子)さんより連絡があり、私が行ってきた商品開発や会社が立ち行くまでの経緯を今回のドラマの参考にさせて欲しいとお話がありました」
寺尾氏は、昨年刊行した『行こう、どこにもなかった方法で』で、高校を中退してヨーロッパを放浪し、帰国後にミュージシャンを目指すも挫折、その後29歳でバルミューダを創業し、成功に至るまでの破天荒な半生を語っているが、その中には「そよ風の扇風機」のモデルとなった「グリーンファン」の開発ストーリーも描かれている。(以下、同書より参考、引用)
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バルミューダ創業当時から、自然界の風を再現した次世代の扇風機を作りたいと夢見ていたという寺尾氏は、当時の熱い想いを以下のように振り返る。
「小学生時代の夏休み。朝から気温はぐんぐん上がり続ける中、私たちは外で遊んだ。カブトムシを取ろうとして、ジリジリと木に近づく時、吹きぬける風に心が救われる思いがした。坂道を下る自転車の風は、気持ちが良かった。あんな風が部屋の中を吹き抜けたら、どんなに素晴らしいだろう」
空気や流体に関わる開発を行うなかで分かったことは、自然界の風を再現するためには、扇風機の風にふくまれる「渦」の成分を消す必要があるということだった。そこで寺尾氏は、以前訪れた町工場のことを思い出す。
「職人さんが大きな扇風機を使っていた。よく見ると、それを壁に向けて送風させ、はね返った風に当たっているようだ。不審に思って聞いてみると、知らないの? こうすると風が優しくなるんだよ、と言われた」
それが風を障害物に当てるという着想を得たきっかけだった。さらにテレビで偶然目にした子供たちの二人三脚競走から、遅い風に速い風をぶつける2枚羽根の構造を思いつく。
ドラマではそれぞれ100円ショップとフィギュアスケートの話に置き換えて再現されていたが、「グリーンファン」の製作過程をかなり忠実に再現しているようだ。
しかし同書によると、寺尾氏の前に最後に立ちはだかったのは、扇風機をつくるための資金繰りだったという。ドラマではのんびりと開発しているように見えるが、実際のバルミューダは当時、リーマンショックのあおりを受け、倒産寸前だった。そこからいかに資金繰りをつけ、起死回生の大勝負、“そよ風の扇風機”グリーンファンの開発、そして発売にこぎつけたのか。18日の放送では、鈴愛が資金繰りに奔走していることも示唆されたが、ドラマの今後を占うヒントは、寺尾氏の開発ストーリーのなかにありそうだ。