「さらっとやられちゃって、みんなくやしいんだろうな」 ハライチ岩井新連載でも“腐り芸”全開

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ライバルはいない

――お笑い芸人という職業が、ご執筆時に生きていると感じることはありますか?

岩井:お笑い芸人は行動するときに、その意味とか、人の気持ちとか、今どういう現象が起きているかを意識している人が多い職業だと思うので、人より書くネタは多そうな気がします。
 でもお笑いのネタって基本的にはツッコミで終わるのですが、文章はツッコミで終われないですよね。トークもパワー、力ずくで終わらせられますが、文章は明確なオチが求められる。最後に面白いことが起きたところで終わらせてもいいんですけど、そこから冒頭に向かって回帰すると、読んだっていう満足感が違いますよね。

――確かにそうです。でも文章経験の浅い中で、そのことは書いていて、どのくらいで気づきました?

岩井:5、6本書いたくらいですかね。「~と思う」から始まって、だから「~と思った」で挟められれば、どれだけ間に違うことを書いていても、「なるほど」と帳尻が合う。一周戻って来られます。
 自分で言うのも何ですけど、トレース能力に長けているので、ちょっと見たりすればある程度のところまではすぐに何となくできるんです。そこからあんまり上がらないんですけど(笑)「書き始めたばかりなのにすごいですね」と言われるのが一番気持ちいいですね。それでモチベーションが保てます。こんなにさらっとやられちゃって、みんなくやしいんだろうなと思います(笑)

――そうなんですね。澤部さんや同じ芸人仲間からの「読んだよ」という反応はありましたか?

岩井:一切ありません。読んでほしいとも特に思わないですね。読まれて恥ずかしいとは思わないですけど、読んでもらっても誉められても、フラットな立場の人ではないので参考にならないので嬉しくないですね。全く知らない人から良かったよと言われるのが一番ストレートな感想なので嬉しいです。強いて言えば、ミスチルの桜井さんとかに誉められたら、言う必要がないのにいいと思ったから言ってくれたんだな、と思えて嬉しいですね。

――「作家」としてライバル視している人はいますか?

岩井:いません。先日、とある一篇を友人に読んでもらったら『檸檬』(梶井基次郎)みたいだねと言われたので、普段小説はあまり読まないんですけど読んでみたら文章がクドくて、ラノベを読み過ぎた中学生みたいだなと思って。なので、クドくなりたくない、酔いたくないなとは思いましたけどね(笑)

――ご執筆時の必需品などありましたら教えてください。

岩井:家のノートパソコンと静けさです。ソファに座って、ソファの座面の高さのテーブルに足を乗せて、膝にパソコンを置いて書いてますね。大体夜、仕事終わりに書いています。

――これから書き続ける上で、挑戦してみたいことや抱負などありましたら教えてください。

岩井:とにかく今はこの文字数で続けたいです。さっき言ったように、一歩目が早いので、そこに到達して追いつかれるまでにそこからの方向を決める、どこに長けているか見つけたいですね。この間『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』を読んだんですけど、自分には文章の個性がまだないし、文章が上手くはなりたいけれど個性を出したいのかもわからないので、発想だけはちゃんと書こうと思っています。コアなファンのためのサービスはあまりしたくないので、多くの人に読んでもらえるようになりたいです。
 テレビに出ているコラムニストやエッセイストって何を生業にしているんだろうと思うので、肩書きとしてそれがほしくはないですが、この連載を本にして、具体的には思い浮んでいないんですけれども、続けるからには邪道と言われようが何かを得て新たな創作につなげたいです。結果、LOFT/PLUS ONEでしかライブをやらない人にはなりたくないんで(笑)

デイリー新潮編集部

2018年9月14日掲載

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