女帝「塚原千恵子」が告白“体操パワハラ問題”全真相 複数から浮上した速見コーチの暴力問題

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全員が暴力を証言

 同じ7月10日、私はNTCで指導するAコーチから相談を受けました。「NTCでうちの子供たちが練習するとき、速見コーチと宮川さんと同じ時間に重なると、恐怖で立ち止まってしまうのですけど、どうにかならないでしょうか」という訴えでした。

 しかし、私は1人の訴えだけで暴力の有無を判断すべきではないと思いました。そこで、NTCに集まってきたほかのコーチ3人に聞いたところ、なんと全員が「髪を引っ張って引きずり倒していた」「長時間立たせて怒鳴っていたので注意した」などと答えたのです。選手にも声をかけ、その場にいた3人全員から暴力の目撃証言が得られ、うち一人は「海外遠征のとき同室の宮川さんの顔半分が腫れていたので、“どうしたの”と聞くと“速見コーチに殴られた”と言っていた」と証言しました。

 私は7人の証言を体操協会に伝え、「私自身は“2020”で忙しいから調べてほしい」と頼みました。こんな暴力が、トップ選手の練習するNTCで行われていることがわかれば、JOCを巻き込んでの大問題になるに違いありません。それを非常に危惧して、「調査を急いでください。“2020”の合宿もあることですし」と、協会に伝えたのです。ただし、それ以降の処分の決定に、私は一切関わっていません。無期限の登録抹消と決めたのは、協会の弁護士です。

 このように“2020”の合宿が始まったとき、体操協会はすでに、速見コーチの暴力問題の調査を始めていました。しかし、私自身は速見コーチの暴力を直接見たことがなく、そもそも7月になるまで、暴力問題の存在すら知りませんでした。また、私は自身に寄せられた相談に対処したまでで、能動的に問題を浮上させようとしたわけではないのです。

 ところで、2020特別強化対策について、もう少しお話ししたほうがいいかもしれません。ここには代表候補選手の多くが参加してきましたが、任意ですので、宮川選手は一昨年、昨年と参加しませんでした。実は、私の前の強化本部長だった小林隆さんがおられ、今年亡くなられたのですが、“2020”にあまり賛成しておられなかった。宮川選手は小林さんと親しかったこともあって、参加しなかったようです。

 しかし、“2020”では、ロシアやアメリカなど海外のコーチを長期間雇うので、振付を直したりするためのよい機会になります。一般に男性コーチは、女子のゆかの振付は得意ではないから、宮川選手には絶好のチャンスだったはずです。だから、体操クラブの代表に勧められ、宮川選手も今年は参加することになったのです。私も彼女のために、アメリカから振付師を呼んで準備していました。

 宮川選手のゆかの振付が磨かれれば、速見コーチにもメリットがあります。まだ彼の暴力を知らなかった私は、当初、単純にそう考えていました。“2020”の合宿に速見コーチが参加できなくなったのは、私にとっても想定外で、当初はまったく見越していなかったことなのです。

(2)へつづく

週刊新潮 2018年9月13日号掲載

特集「独占! 女帝『塚原千恵子』が懺悔の『全真相告白』5時間」より

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