中国外交部による日本人特派員への“嫌がらせ”が酷すぎる 上司に脅しの電話も…
ビザで圧力をかける
福島:中国特派員にとって一番辛いのは、取材から締め出されること。さらには中国にいられなくなることですからね。中国内で取材を行うには、電話やFAX、メールだけでは不可能です。新聞社やテレビ局も中国支局は自社で部屋を探すことはできず、当局からこの範囲から選べと決められた場所しか使うことができません。盗聴は無論のこと、FAXだって全てコピーされているでしょうし、ネットは国が管理しています。ですから、情報提供者に話を聞くとなると対面で行うのが最も安全なわけです。対面で話をするには、中国を出るわけにはいかない。そういった記者に対して、中国がよく使う最も有効な手段が、1年ごとに更新される記者証とビザを発給しないことです。
――記者証とビザはどのように発給されるのだろうか。
福島:ビザは年末に切れますから、それまでに外交部の更新する記者証を、公安局に提出しなければならないのですが、当局にとって差し障りのある記者には外交部が記者証をなかなか更新しません。秋口になると、「来年も1年宜しく」と申請するわけです。通常は2週間程度で更新される記者証ですが、ひと月以上経っても何の連絡もこない。なぜなのか問い合わせても「テクニカル上の問題で……」とか要領を得ない。問い詰めていくと、「自分の胸に手を当てて考えてごらん」とくるわけです。そのうち12月も終わりが迫ってやきもきさせておいて「クリスマスプレゼントですよ。今回は特別、大目に……」などと記者証が更新されたりもする。そんなことをされたら、翌年からはあまり中国政府を刺激しないよう気を遣うようになりますよね。
――もっとも、それを“外交部の嫌がらせ”と自らブログに書き込んだのが福島氏である。
福島:私の場合は、江沢民を悪く書いたのが当局から睨まれたきっかけですね。それで、外交部は記者証を発行しないと言ってきた。そうなるとビザも発行されないから国外退去になってしまうわけです。「ビザを発給しないなんて、これは脅しじゃないか、メディアに対する報道の自由の妨害じゃないか」という建前もありますから、ブログに書いちゃった。一応、上司には相談したんですよ。そうしたら「産経新聞の記者が強制退去されるのは31年ぶりだな」とか言って面白がっていた。今考えれば「いずれビザも出るだろう」と踏んでいたからでしょうけど、私は本当に心配でした。でもこの時が2007年で、翌年には北京五輪が控えていたんです。当時の上司が「今ここで嫌がらせみたいに記者を日本に帰したところで、五輪前の中国のイメージに傷がつきますよ」みたいな忠告を中国側にしたんだと思うんですよ。結局大みそか前のぎりぎりにビザが出ました。この件で、しばらくおとなしくしようと思ったんですが、その翌年に、チベット問題とか起きれば、やっぱり記者だから、書くんですけどね。当然、またいろんな圧力が来て、結局五輪が終わって日本に帰ることになりました。
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