安倍首相と石破氏、地方票を獲得するのはどちらか

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 一騎打ちの構図でヒートアップする自民党総裁選。議員票では安倍首相が優勢なだけに、対抗馬の石破茂・元幹事長がどれだけ地方の党員・党友票を獲得できるかが焦点になっているのは周知の通りだ。2012年の総裁選で明らかになったように、地方では石破氏に一日の長があるというのが下馬評だが、その自負の根拠になっているのは、初代の地方創生大臣を務めた実績だ。

 その石破氏の地方創生政策のブレーンの一人が、全地方自治体を自分の足で歩いているという地域エコノミストの藻谷浩介氏。藻谷氏が「地域再生請負人」ともいえる13人と語り合った対談集『完本 しなやかな日本列島のつくりかた』に、石破氏はこう寄稿している。〈藻谷さんとの出会いは運命的なものだったように感じています。地方創生担当大臣としての仕事を進めていくうえでも、彼の著作から受け取ったヒントは本当に大きいものでした。そして、地方創生という政策が、現在の日本が抱える課題の多くに対する解決策になることにも、藻谷さんがいなければ気づかなかったかもしれないとも思います〉
 
 安倍首相もまた、「ゴルフ三昧」だったお盆休みが明けたのちに総裁選が事実上スタートした前後から、藻谷氏が注目する地域再生の例を辿るように地方を訪問していることがわかる。

 先月25日に宮崎県えびの市長と面会しているが、えびの市は藻谷氏の唱える「里山資本主義」にならって里山を全国にアピールしている自治体だ。

 また、翌日訪れた鹿児島県の鹿屋市は、限界集落ながら焼酎や唐辛子を世界で売るなどして再生した柳谷地区(通称やねだん)を擁し、藻谷氏をして〈本当に暮らしやすい場所は、都会ではなくド田舎にある。本当の人材は、大組織にではなく草の根のなかにいる。「やねだん」を知るほど痛感されます〉と言わしめる自治体。石破氏も2015年の段階で訪問して地方創生のヒントを得ている。

 さらに翌27日には、「鉄オタ」を自称する石破氏のお株を奪うようにして、富山県の次世代型路面電車(LRT)に乗車しているが、これも藻谷氏がいちはやく「コンパクトシティ」の要となる例として注目したものだ。

 地域再生の努力にどれだけ注目し、利益をもたらす政策を打ち出せるのか。総裁選で問われるのはそこだ。安倍首相はやや「付け焼き刃」の感が否めないが、答えは9月20日に明らかになる。

デイリー新潮編集部

2018年9月10日掲載

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