これぞ“ヒモの鑑”と言いたくなる「窪田正孝」の体たらく「ヒモメン」(TVふうーん録)
男でも女でも、働く気がない人間はイヤだ。心身ともに健康で、就業を阻む事情がないのに働かず、家族や恋人の金に依存して生活する。生物界には多々ある形態かもしれないが、人間は働く苦しみと喜びを知ることが大事だと思っている。
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しかし今夏、ふっと考えさせるドラマがある。女を働かせて金銭を貢がせている情夫、いわゆるヒモ。そんなヒモがうっかり大活躍しちゃう「ヒモメン」だ。
主演は窪田正孝。働きたくない意志を全力で貫き、無職に謎のプライドをもつ、なかなかのクズである。彼の生活を支えるのは看護師の川口春奈(国家資格を持つ女は寄生されやすいよなと、設定の妙に膝を打つ)。
川口は働いてほしいと再三伝えても、のらりくらりと躱(かわ)す窪田。ただ、言い訳と屁理屈のオンパレードではない。創意工夫と豊富な打開策によって、断固として働かない方向で頑張るのだ。食べられる雑草を摘みに行ったり、賞金がもらえる大食いに挑戦したり、体を張ってでも「働かない」。
元手がないときは、川口が大切にしている漫画全巻、あるいは今は着ない冬物の洋服を売りさばいて現金化。
ついでに家事もやらない。家にいるならせめて食事くらいは作ろうと思うのが人の常。しかし、窪田は一切しない。空腹で倒れたまま、待っている。ゴミ出しすらまともにできない(2階から投げるってゴミ以下!)。
世の女たちは、窪田の体たらくに口を揃えて「こんなヒモ、無理!」と叫ぶ。叫ぶのだが、ふと、口ごもる。
なぜなら窪田は照れることなく直球で甘え、日々愛の言葉を口にする。他の女には目もくれず。一途な愛をひたすらに誓う。ハグもキスも、たぶんセックスも厭(いと)わず励行すると思われる(自己中っぽいけれど)。そんな男をヒモと蔑み、簡単に捨てていいのだろうか。脳内でもう一人の自分が囁く。「案外悪くないかも。世の中には働くクズも稼ぐクズもいるからなぁ」と。
そこで考える。みんなが嫌う「浮気・暴力・借金」。この3つが揃ったらそれこそクズ王だが、窪田にはひとつもない。毎日500円とか千円の小銭をせびるが、分不相応に自分を盛るために大金を借りるようなことはない。競馬、競輪、パチンコなどギャンブルもやるが、大金は賭けず。浮気も暴力もない。
金がなければ一緒にホームレスになる、とまで宣言。
川口は何度も突き放そうとするが、結局は窪田にほだされっぱなし。川口の先輩看護師・佐藤仁美も完全にヒモ飼い気質で、窪田には複雑な思いを抱く。昔、ヒモに金を騙し取られた経験があるからだ。愛憎だね。
川口に恋する医師・勝地涼は、悪意を込めて窪田に数々の嫌がらせをするものの、すべて裏目に出る。想定外にクリアしていく窪田に地団駄踏む。金を持っていても性根がイケすかない。
窪田は見栄で嘘もつくが、浅墓(あさはか)なホラなので、逆に笑いの種に。常識人や組織人が悩んで苦しむ壁を、ヒモの窪田が無意識に破壊、難なく越えていくという爽快感もある。うっかりヒモの人権を考慮する、寛容の夏。