ポリコレ棒だけじゃ強くなれない“恋愛観の不均衡”(中川淳一郎)

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 ここ数カ月、「女性向け恋愛メディア」の仕事をしております。“AM(アム)”というネット媒体向けの仕事なのですが、自分自身の魅力に自信がない20〜30代の女性に向けて、自信を持てるよう指南する記事を書くわけですね。

 女性に対し、「あなたは魅力的です!」といった記事を同サイトは出し続けます。それは男たる私もかなり理解できます。だって、どう考えたって、男と2人で飲むよりも、女性と2人で飲む方が圧倒的に楽しいですもん。だからこそ、同サイトで私もこう主張します。

「男なんてものは単に性欲があるだけの存在なので、女性が真面目に向き合ってもロクなことはない」

 この主張を、恋愛関連の知見があり、AVにも出演したこともある若手女性識者と話したことがあります。この対談により、「自信が持てました!」と女性読者からの反響があったそうで、それは素晴らしい。

 そうした状況を経て、とうとう同サイトの月額何千円かを払う“サロン”に登録した方々を対象に男の本音を語らなくてはいけなくなりました。これは、25人ほどの、恋愛や結婚を真剣に捉えている女性の皆様方を前にした話です。

 一体、なぜ私にそんな機会をいただけたのかがまったく理解できませんでした。ただ、少なくとも、男ってものは本当に性欲があるだけのどうしようもない連中が多いということは、この日のイベントに来た美人の皆様方に分かっていただかなくてはマズいという一心で、本当のことをしゃべり続けました。

 男と女の恋愛観の不均衡ぶりってものはキチンと互いに理解しなくてはいけないのですが、本当に男というものはどうしようもない。男が単にその場の性欲を解消することばかり考えている一方、女性は長きにわたる幸せな関係を築こうと男との関係を求めるわけです。

 だからこそ男は、本当は結婚したり交際したりする気はないにもかかわらず、その場しのぎで女性の愛情を利用し性欲を発散すべく女性をラブホテルに誘い、「あとは知らん」とばかりに彼女を捨てるのです。

 ここの不均衡が男女関係を不幸にする。

 私自身も、恥ずかしながら性欲ムンムンの20代・30代を過ごしてきただけに、正直女性が男に求めることなんてわかりませんでした。ただ、女性は一生の安定やら一生の愛情を求める例が多いのだな、ということはメディア関係の仕事をしていれば分かります。

 女盛りの4年間をあなたのために捧げてきたというのに、あなたは私を捨てるの?みたいなことを女性は思います。一方、男は「いや、お前が勝手にオレにホレただけだろ?」みたいに言いたくなる。

 この男の考え方というのは、貴重な数年間をその男に対して捧げた(と思っている)女性からすればまったくもって許せないでしょう。しかし、男が「お前が勝手にオレにホレただけだろ」的な発想で逃げるケースは現実に多々見られる。昨今、社会的弱者がその立場を利用してマジョリティを糾弾する、「ポリコレ棒」的主張がネットを中心に存在しますが、いや、弱い立場の人は弱いままだ、と言いたい次第であります。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんしゅうきつこ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2018年9月6日号掲載

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