選手生命より日程優先の甲子園――矛盾する「朝日」社説、せめて大会期間の2日延長を
選手生命より「大会日程」
「3回、4回ぐらいから疲れで下半身に力が入らなくなりました。(あそこが)限界でした」
アスリートは弁解しない。勝負の世界に生きる人間は、自分の力不足を語り、そして相手を讃えることはあっても、自らの不調を口にしないことが多い。だが、試合後、身体のことをしつこく質問する私に、吉田投手はそう答えてくれた。
「本当はもっと早く代えてあげたかった……」
中泉監督は初めてのエース降板となった場面を涙ぐみながらそう振り返った。
その言葉の奥には、「吉田が万全だったら大阪桐蔭といえども……」という、口に出すことはできない思いがあったに違いない。
高校生が炎熱のグラウンドで最後の「5日間」で「4試合」に登板し、「570球」を投げたというのは、もう、野球の本場・アメリカでは「考えられないこと」だろう。
通信社の記者として長く日米の野球を取材してきた神田洋・江戸川大学教授によれば、
「アメリカではMLBが中心となって2014年に“ピッチスマート”というガイドラインが作られました。ここには、子どもたちが肩や肘を壊さないための投球数や投球間隔などが書かれており、日本の高校生世代であれば105球が上限とされています。そして76球以上投げた場合は中4日以上空けるべきだ、となっているんです。アメリカではこういった指針が作られるほど、選手の故障についてよく考えられているのです」
選手の身体を最優先して考えるアメリカから見れば、吉田投手が強いられた過酷な連投は、まさに「クレージー」と映るに違いない。すでに日本の高校野球の熱狂ぶりや連投問題は、アメリカの野球関係者の間でも有名だ。松坂大輔が渡米した際には、甲子園での激投ぶりが報じられたし、スポーツ専門チャンネルが済美の安樂投手が772球も投げたことを扱った番組を作ったこともある。
「ベースボール」と「野球」の違いと言えばそれまでだが、あくまで「選手」を中心に考えるアメリカと、「大会運営」が絶対の日本との差を痛感させられる。
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