選手生命より日程優先の甲子園――矛盾する「朝日」社説、せめて大会期間の2日延長を
吉田輝星の連戦連投881球は美談か 「高野連」が金の卵を破壊する――門田隆将(2/2)
第100回の記念選手権大会の華は、金足農(秋田)のエース吉田輝星(こうせい)投手だった。連戦連投881球。日本中を沸かしたその活躍だが、果たしてこれを美談として終わらせていいのか。2日間で行われる3回戦で2日目に試合があった場合、翌日には準々決勝が行われ、「5日間で4試合」を戦わなければならないことになる。過酷な大会日程が連投を強い、好投手が潰された例は枚挙にいとまがない。
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私には今大会、印象的な場面がある。決勝戦の約3時間前、金足農ナインは、甲子園の室内練習場で報道陣の試合前インタビューを受けていた。吉田投手を記者やテレビクルーが十重二十重に取り囲んだ。
「全国の人が吉田君の身体を心配していますよ」
私はそう聞いてみた。
「大丈夫です。身体は軽いです。肩も肘も問題ありません」
笑顔で吉田投手はそう答えてくれた。しかし、そんなはずはなかった。下半身、特に股関節は悲鳴を上げているはずだ。だが、そのことを試合前、吉田はおくびにも出さなかった。
勝負の世界では、弱みを見せればそこを徹底的に突かれる。疲れなど、どこにもありません、と吉田は報道陣に微笑むしかなかった。しかし、それが嘘であることが、私を含む記者たちにはわかっていた。
「俺、もう投げられない。下半身に力が入らない……」
吉田が桐蔭打線に痛打され、初めてチームメイトに吐露したのは、それからおよそ4時間後、大阪桐蔭の猛攻が続く5回裏のことだった。だが、3年間ともに戦ってきた仲間は、とっくに吉田が「限界を越えていた」ことを知っていた。
「そうか。俺たちが逆転するから、ここは踏ん張れ」
二塁手の菅原天空(たく)はそう答え、この回が終わった時、佐々木大夢(ひろむ)主将と共に、中泉一豊監督に、
「吉田は、もう限界です」
と告げたのである。甲子園での魂の投球、実に881球。ついに吉田投手の奮投は「終わった」のである。
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