金足農「吉田輝星」の連戦連投881球は美談か 「高野連」が金の卵を破壊する
5日間で4試合の殺人スケジュール
しかし、それはあくまで「大会前半」に対戦した場合である。大阪桐蔭には、柿木蓮(れん)、根尾昂(あきら)、横川凱(かい)という、どこのチームにいっても絶対的エースとして君臨できる超高校級投手が3人いる。つまり、大阪桐蔭は、この3人のローテーションで投手陣の疲労が最小限のまま決勝戦を迎えることができる。大阪桐蔭が圧倒的な打力と共に、揺るぎない優勝候補である所以(ゆえん)がそこにあった。
全国制覇という偉業を成し遂げるには、「運」が不可欠だ。なかでも大きいのは「日程運」である。ピッチャーを酷使せずに決勝まで進出できるかどうか。その点においても、大阪桐蔭は極めて恵まれていた。
そこには、初戦をいつ終えるかという点に加え、ベスト8を目指して激突する3回戦がいつかというポイントがある。3回戦は8試合あり、2日間で行われる。この2日の内、1日目に登場するか、2日目に登場するかは、はかり知れないほどの「差」がある。
1日目に試合があれば、決勝まで進んでも「6日間で4試合」のスケジュールだ。だが、2日目に登場すれば、翌日には準々決勝があり、次に1日の休養日があるだけで、「5日間で4試合」を戦わなければならないのである。
炎熱の甲子園での「5日間で4試合」――この過酷さは、どう表現すればいいだろうか。今回、大阪桐蔭は、初戦を大会2日目に終え、ポイントとなる3回戦は1日目に突破した。
一方、金足農は初戦が大会4日目にあり、3回戦は2日目に試合をした。つまり、予選から一人でマウンドを守り続ける吉田投手には、最後の最後にさらに「5日間で4試合」という殺人スケジュールが待っていたのである。
吉田は、秋田県予選ですでに636球を投げていた。そして甲子園初戦の強豪・鹿児島実戦で14奪三振を記録して5対1で破ると、快進撃を続けた。
最速150キロのストレートは伸び、威力あるスライダーと、タイミングを外すチェンジアップが抜群で、大会前から注目していた私には、想像以上の逸材に映った。しかし、彼を待つ日程の過酷さが私には気にかかって仕方がなかった。
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