金足農「吉田輝星」の連戦連投881球は美談か 「高野連」が金の卵を破壊する
吉田輝星の連戦連投881球は美談か 「高野連」が金の卵を破壊する――門田隆将(1/2)
県大会から甲子園の決勝まで、たった一人でマウンドを守り続けた吉田輝星(こうせい)投手の姿は、確かに胸を打つものだった。だが、果たしてこれを美談として終わらせていいのだろうか。過酷な日程を強いる高野連が、多くの好投手を潰してきた現実から目を背けてはならない。
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第100回の記念選手権大会が終わった。1世紀にわたって球児たちの死闘がくり広げられた甲子園には、平成最後の夏、史上最多の101万5千人もの観客が詰めかけた。
主催する高野連・朝日新聞は笑いが止まらない。しかし、そこでは、これまでの大会で指摘されてきた大問題があらためてクローズアップされた。
今大会の華は、なんといっても金足農(秋田)のエース吉田輝星投手だった。
「金足農の吉田に注目しておいてください。間違いなく大会ナンバー・ワン投手です。底知れない男です」
私は開幕前、秋田県大会決勝で金足農に0対2で完封負けした明桜(めいおう)高校の関係者からそんな連絡を受けていた。東北を代表する剛速球投手として吉田輝星の名前こそ知っていたが、連絡を受けて「それほどの選手なのか」と、俄(にわ)かに注目をした。
今大会は、全日本メンバーそのものである大阪桐蔭の史上初「2度目の春夏連覇」が成るか否かが最大の焦点だった。言いかえれば、それを「どこが阻止するのか」ということである。
吉田を筆頭に、創志学園(岡山)の西純矢(じゅんや)、花咲徳栄(とくはる)(北埼玉)の野村佑希、星稜(石川)の奥川恭伸、下関国際(山口)の鶴田克樹(かつき)、創成館(長崎)の川原陸といった好投手が顔を揃え、大阪桐蔭の強力打線を抑え込む可能性を持つ彼らが、まだ疲労が蓄積していない大会前半に激突すれば、「番狂わせもあり得る」と私は思っていた。
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