56年前の「コカ・コーラ」半自動式自販機が未来技術遺産に選出 瓶コーラは今も健在
国立博物館も入手できず
「コカ・コーラのボトル用の半自動式販売機(V-63型)で、1962年に三菱重工(当時は新三菱重工業)と米国のベンド社により共同開発されたものです。日本で初めて、右から左へ傾斜した収納棚を持ち、取り出し口へ転がるようにしたスラントシェルフ型と呼ばれるタイプです。現在の自販機につながる技術を備え、“自販機大国”といわれる日本の生活様式を作り出した基礎となったと考えられます」(同)
コインを入れて、左側の扉を開き、ボトルを自力でガッコン!と引き抜き、自販機に備え付けられた栓抜きで、これまた自分で栓を抜く……あの自販機だ。三菱重工が製造していたということに驚かされるが、そんなに貴重なものだったとは……。現物を国立科学博物館は入手できたのだろうか。
「いえ、ないんです。収納スペースもすでに限界ですし、予算も限られております。どちらかといえば、この未来遺産は、どこかにもし残っていれば、それは貴重なものなので、大事にしてくださいと、保存を呼びかける意味合いが強くなっています」(同)
半世紀以上前の製品である。今も残っているところはないのか、コカ・コーラ ボトラーズジャパンに聞いてみると、
「62年に半自動型と全自動型合わせて880台が全国に設置されましたが、残念ながら、当時のまま販売用として稼働しているものは存在しません。ただし、展示用としては、弊社の宮崎工場や京都工場の工場見学用施設などに残されています。日本で最初の清涼飲料用自販機ですから!」(コカ・コーラ)
三菱重工と米国ベンド社との共同開発とあるが、なぜなのか。
「資料がなく詳細は分かりかねますが、当時すでに米国ではコカ・コーラの自販機はあったといいます。ただし、三菱重工さんとの共同開発とあることから、米国で流通していたものとは別物だろうと考えられます。おそらく日本独自のものではないかと……」(同)
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