「ジャニーズ」に学ぶ女社会の社交術

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 女が嫌いな女、というテーマを最近よく目にするように思う。テレビ番組に限らず、SNSでの炎上や女性芸人のネタなど、様々な形で。まったくの個人的感想だが、女子校出身者としては、女どうし憎ませ合うような構造には居心地の悪さを感じる。何より、嫌いな女はこんな女、と盛り上がっている側が今度は「ああいう女たちこそ人間性を疑う」と外からひんしゅくを買ってハシゴを外される不毛さよ。かくして次々と再生産されていく、女が嫌いな女たち。延々と引き延ばされる、呪われた話題の賞味期限。リングの貞子もびっくりである。

 と、偉そうに書いてはみたものの、女社会はこれだから面倒臭い、と嘆くつもりはない。むしろ面倒臭さを少しでもなくす方法を考えてみたい。まずは陰湿と言われがちな女どうしのつきあいにおけるルールを明文化してみる。ひとつ、出し抜かないこと。ひとつ、キャラはかぶらないこと。女社会はチーム戦。それぞれがそれぞれのキャラを背負い、うまみとリスクを等しく味わうのが良しとされる。ヒーロー戦隊がリーダータイプのレッドばかりでは機能しないように。だから持ち分よりはみ出た主張や、他人のお株を奪うような行動をかますと嫌われる。

 女子アナしかり、アイドルしかり。ぶりっこ、お笑い、セクシー担当、姉御肌、天然キャラ……人気になるキャラは数あれど、女性コミュニティの中では枠は1つずつしかない。特に芸能界では、○○キャラと言えばこの人、と第一想起されることは非常に大きな意味を持つ。つまりキャラがかぶった時点で、キャラ変えをして別枠の1位を狙うか、2番手に甘んじて存在感が薄くなるのを眺めているほかない。始まりが同じ「ぶりっこ」だとしても、「オタク」や「高学歴」をかけあわせれば違うキャラになる、など涙ぐましい実験を重ねる者もいる。とにかく己のキャラは言ったもん勝ち、貫いたもん勝ち。それが本当の性格かどうかは別として。それが女社会のルール。だからこそ女性タレントたちは時に世間とのギャップに悩み、闇を告白したり病んでしまったりするのだろう。

「女が嫌いな女」はジャニーズが救う

 そこでお手本となるのは同じ女性ではなく、ジャニーズではないかと常々思っている。キャラの振り分けがグループ人気にも貢献するという点で格好のお手本になるからだ。

 一部例外もあるだろうが、メンバーはハンサムな男性でありながら、グループ内でキャラのかぶりはない。ルックスが秀でてなくとも、コントやキャスター、執筆、ブサイク売りまで。NEWSの手越祐也にいたってはスキャンダルが多いことを逆手にとり、バラエティで持ち味にするくらいだ。ナンバーワンよりオンリーワン。かのSMAPの大ヒット曲「世界に一つだけの花」は、ジャニーズの社訓と言ってもいいだろう。

 割り振られたキャラを徹底している人生という点で、特に香取慎吾の堂に入った「末っ子」ぶりは驚きである。SMAPの最年少メンバーとして11歳でデビューしてから30年間、ずっと明るく無邪気な弟キャラで来ていると思う。SMAP解散を経ても、いまだに香取は「慎吾ちゃん」である。呼び名というより、世間のイメージの中で、という意味だ。元気いっぱいで憎めない、体の大きい近所の男の子、みたいな。彼の出演するCMはことごとく、そのキャラクターを崩さない。宝くじやコンビニのCMで見せるちょっと拙い感じのしゃべり方とか、能天気そうなリアクション。もう40も超えたぞ、こんな年の取り方させるのはちょっとむごいんじゃないか、とさえ感じる。市川海老蔵とか長谷川博己という同い年の男性芸能人と比べると、その特異さはよくわかると思う。

 本当の香取の性格は知らない。実は繊細かつ、老成した人ではと感じることもある。永遠の弟キャラの陰に、哀しみもあるだろう。でも彼はさほど自分語りをしない。だけど、というべきか、だから、というべきか、香取の人気はずっと高め安定を保っている。女性のアイドルやアナウンサーがよく、「あの時のキャラは嫌でしたが、やれと言われたから仕方なく」と後年吐露することで、当時からこびりついた厄落としをしようとするのとは対照的だ。

 それぞれがそれぞれのキャラを全うすることで、本人の人気だけでなく、グループの価値も引き上げる。そんな女社会の鑑のようなルールを徹底的に守るジャニーズが、女性に愛されないわけがない。乱暴だが結論。女が嫌いな女、という呪いを断つにはジャニーズに学べ。女が嫌いな女の類型を吐露し合うより、香取慎吾の努力に頭を垂れたい。無意味だろうか、それとも不遜か。でも女どうし憎ませ合うのはたくさんだ。といいつつ、うっかり芹那とか来たらやっぱ脱力するだろうな、というのが正直なところだ。

(冨士海ネコ)

2018年8月29日掲載

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