Nスペ「祖父が見た戦場」のここがおかしい! 受信料は小野文恵アナと母のため?
いわゆる「8月ジャーナリズム」の季節だ。6日の広島原爆投下、9日の長崎原爆投下、15日の終戦の日の前後に「戦争の悲惨さを忘れず伝えよう」と、そうした報道ばかりになることを業界ではこう呼ぶ。今年もNHKは、戦争特集を何本も放送した。
ところが中に、「ちょっと待ってよ。それはないでしょう!」と思わずドン引きしてしまった番組があった。小野文恵アナウンサー(50)が、祖父の最期を追ったNHKスペシャル「祖父が見た戦場~ルソン島の戦い 20万人の最期~」(本放送8月11日21時~・再放送19日1時20分~)だ。
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論評する前に、公式ホームページから番組の概要を確認しておこう。
20万の日本兵が戦死した「フィリピン・ルソン島の戦い」。その一人が小野アナの祖父・景一郎氏だ。このことを去年、母親から知らされた彼女は、「今年、他の遺族と共にルソン島に渡り、祖父の足跡をたどろう」と考えた。
番組は「小野母子と遺族たちの現地調査に同行」した。関係者の手記やインタビュー、日米の資料にあたり、「今回初めて、ルソン決戦で亡くなった、20万人の“最期”が明らかになろうとしている」としていた。
「(祖父の)最後の行程をたどりつつ、その向こうにあるルソン決戦の全貌を立体的に描き出す」特集なのである。
問われる普遍性
まず「他の遺族と共にルソン島に渡り」とあるのに、ロケでは小野アナと母・公子さんしか出てこない点が気になる。
確かに他の遺族が写ったフィリピン慰霊巡拝の写真が1枚出てくる。しかしこれは2017年のもの。いっぽう小野母子のフィリピン行は今年(18年)のことなのだ。「他の遺族と共に……」という表現は明らかな嘘である。
NHKの戦争特集は、当時何が起こっていたのかを掘り起こす番組だ。
そのためのリサーチ・取材・ロケなどに、数千万円の経費が投入されている。価値のある歴史的事実を発掘しなければならない。
ところが今回の番組は、小野家の私的なヒストリーという側面が強い。
番組も「ワタクシ事ですが、私には会ったことのない祖父がいます」で始まっている。
途中でも、「家族にとっての大きな謎、景一郎はいつどこで最期を遂げたのか」とある。基本は“ワタクシ事”なのである。
それでも“ワタクシ事”から普遍性のある大テーマに行き着くのなら、まだ納得できる。
ところが祖父の最期について、正確な場所は結局わからないまま。ましてや「20万人の最期」は、CGが描く地図上の赤い点で示され、十把一絡げにされておしまいだ。
むろん、それでは格好がつかないので、日本から持参した卒塔婆を立て、お供え物を並べた。そして2人が「ふるさと」を歌うという情緒で着地させたが、これではあまりに安っぽい。
果たして、この程度の番組に膨大なコストと労力を費やす価値があったのだろうか。
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