2人の“九州のゴジラ”、“青森のドクターK” 第100回「夏の甲子園」怪物たちにつく値札
晴れ舞台での150キロ
“ゴジラ”に続くあだ名としては、“青森のドクターK”。八戸学院光星(こうせい)の福山優希だ。U18代表候補ではないものの、野球ライターの安倍昌彦氏は、彼にこんな期待をかけていた。
「145キロのストレートと、高校生ではなかなかいない縦のスライダーを駆使。青森大会でも三振の山を築いてきました。強豪校を封じられれば、プロ注目右腕となるのは必至です」
大会前に取材に答えた福山本人は、全国的な知名度の低さを自覚しつつ、
「スライダーとフォークは120キロ台です。ストレートで追い込んでフォークやスライダーで三振を取るのが自分のパターンですね。“青森のドクターK”と呼ばれるのは悪い気はしません。三振を取ると気分が盛り上がるんで。ただ、夏の予選は思ったほど取れませんでした。各チームが自分のことを研究してきて、バッターボックスの前のほうに立って、変化の小さいところを当ててきたので」
予選をこう振り返ると、グッと目に力がこもった。
「甲子園で150キロが出たら、プロ志望届を出そうと思っています。晴れ舞台では、ひょっとすると実力以上の力が出るかもしれない。アドレナリンがどばっと出るのに賭けてるんです」
チームは2回戦まで駒をすすめるも、150キロは出ずじまいだった。将来は果たして。
福山が羨む存在が、同じ東北の地にいた。決勝に進出した秋田代表、金足(かなあし)農業の吉田輝星(こうせい)は、すでに150キロのストレートを投げた。カーブにスライダー、スプリットといった変化球を巧みに使い分け、桑田真澄を彷彿させるとの評判もある。そんな右腕がU18日本代表候補となるまでを、中泉一豊監督が顧みる。
「彼は1年生から使っていましたが、投げるたびに決め球のストレートを痛打されていました。2年生の秋を過ぎ、本人のなかでなにかしらの意識変革があったんでしょう。好きではなかった走り込みをやるようになりました。練習後、毎日1時間ほどですかね。徐々に効果は現れて、力任せに投げても140キロ止まりだったのが、150キロまで出るようになったんです」
パ・リーグ球団のスカウトの評価。
「吉田くんはかなりいいボールを放っている。真っ直ぐが150キロで、なおかつ動くボールが投げられるのは強み。契約金8千万円、年俸1千万円といったところでしょうか」
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