5年後の実用化なるか「高血圧治療」夢のワクチン “年1回注射”がもたらす数々の恩恵

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5年後の実用化なるか

 さらに言うと、降圧剤のARBは副作用が一番少なく、約8割の日本人に効くとされています。しかも、ひとつだけ降圧剤を服用している患者さんは、全体の半数です。

 ARBのほかに、アンジオテンシンIIの生成を抑えるACE阻害薬という薬剤もありますが、降圧効果がARBよりやや弱いのと、ACE阻害薬は副作用として空咳が出るので、避けられる傾向にあります。

 あとはARBがほかの薬と比べて少し割高なのでそれを嫌がる人もいます。ただし、効果の面に限って言えば、高血圧を抑えるための薬の大半はARBで代用できます。ですから、高血圧の患者さんの半数以上が、ARBを飲むことで一定の効果を得られるのです。

 私たちの高血圧DNAワクチンは、そのARBに代わり得るものですから、高血圧患者の半数以上は、ワクチンを打つことで、毎日、薬を飲むという煩わしさから解放されます。

 膨張の一途をたどり、国庫を圧迫する医療費の抑制にもつながります。

 日本高血圧学会が降圧目標の基準値としているのは、上が140mmHg未満、下が90mmHg未満という値。実際のところ、高血圧DNAワクチンでは10mmHgほどは下がると予想しています。血圧が5mmHg下がれば脳卒中の発症リスクは14%低下し、心筋梗塞は9%、死亡リスクも7%下がる。

 毎日の服薬から解放されるうえ、数値の好転も確実とくれば、これほどいいものはないでしょう。

 あくまで、治験が順調に進み、製薬業界に注目してもらったとき。この前提ではありますが、5年後、2023年から24年ごろの実用化を望んでいます。

森下竜一(もりした・りゅういち)
大阪大学臨床遺伝子治療学教授。1987年大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学研究員などを経て2003年大阪大大学院医学系研究科の臨床遺伝子治療学教授に就任。大阪大で研究グループを組み、バイオベンチャー「アンジェスMG」とともにワクチン開発を進めている。

週刊新潮 2018年7月12日号掲載

特集「年1回の接種で効果持続 『新型ワクチン』で『高血圧』治療ができる!――森下竜一(大阪大学臨床遺伝子治療学教授)」より

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