年1回の注射で「高血圧」治療! 服薬の煩わしさから解放する「新型ワクチン」が治験中
新型ワクチンの仕組み
まずは、ワクチンの仕組みをお話ししましょう。ワクチンとは、血液中に“人工のボール”を入れることで、免疫細胞がたくさんの抗体を作るよう仕向けるもの。たとえばインフルエンザでは、ワクチンというボールを入れてインフルエンザウイルスへの抗体を作り、免疫機能を働かせて感染を予防します。
では、今回の高血圧の場合。アンジオテンシンIIが血圧を上げることは先に述べました。このアンジオテンシンIIはもともと体内で作られているため、免疫機能が“敵”と認識しません。
そのため、これまで抗体を作ることができませんでした。私たちが開発したのは遺伝子治療を応用し、免疫機能がアンジオテンシンIIを“敵”と認識するよう促すワクチンです。
少し複雑になりますが、どのように抗体を作らせるかに触れましょう。“敵”であるアンジオテンシンIIは、アミノ酸の化合物であるペプチドからできています。このアンジオテンシンIIのペプチドを、体内にある、ウイルスを取り除いて枠だけになった遺伝子に埋め込むのです。これが、血液中に入れる“人工のボール”であり、高血圧DNAワクチンです。
このワクチンがリンパ球の一種に働きかけて抗体を作る。リンパ球は、一度抗体を作るとそのシステムを記憶するので、ワクチンの効果は、少なくとも数年以上の持続が見込まれるのではないか。それを見極めるべく、実験をはじめました。
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