意外なアノ人もその“犯人”? 不幸な過去を繰り返さないために〈誰が「国宝」を流出させたか〉

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浮世絵好きだったF・L・ライト

 最後にもう一つ、フランク・ロイド・ライト(1867〜1959)のケースを挙げたい。帝国ホテルを設計した人物としてあまりにも有名なライトは、実は浮世絵の蒐集家かつディーラーでもあった。

 ライトが浮世絵に接したのは明治20年代半ばで、フェノロサを通じてのことだった。これをきっかけに、彼は浮世絵に深く傾倒する。ライトが初めて来日するのは明治38年で、その主たる目的が浮世絵の蒐集だった。この初来日は帝国ホテル設計のために来日した大正6年(1917)より12年も前のことだ。

 最初は趣味だったものの、やがてライトは浮世絵ディーラーとしても活躍する。ボストンの実業家スポルディング兄弟(スポーツ用品の「スポルディング」とは無関係)も、ライトを有力なディーラーとして頼りにした。

 大正2年、ライトはスポルディング兄弟に委託された浮世絵蒐集を目的の一つに再来日し、託された12万5千ドル(現在価値で約20億円)もの金をすべて使い切って浮世絵を買い漁り、アメリカに持ち帰っている。のちに兄弟はほぼ6千点に及ぶ浮世絵をボストン美術館に寄贈する。このスポルディング・コレクションには、ライトの手を経た浮世絵が多数含まれているのだ。

 昭和34年(1959)にこの世を去ったライトの遺品には、スポルディング兄弟に仲介したものとは別に6千点を超す浮世絵が含まれていた。しかしその多くが散逸してしまったのは誠に残念である。

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