ボストン美術館が“至宝の絵巻”を所蔵するワケ〈誰が「国宝」を流出させたか〉
誰が「国宝」を流出させたか――中野明(1/3)
海外には「日本にあれば国宝間違いなし!」といわれる日本美術の名品が多数存在している。誰が持ち去ったのか? なぜ、そこにあるのか?――『流出した日本美術の至宝』(筑摩選書)を上梓したノンフィクション作家の中野明氏が、その一端をやさしく解き明かす。
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五月晴れの一日(いちじつ)、大阪のあべのハルカス美術館で開催していた「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」(現在、福岡市博物館に巡回中。8月26日まで)に足を運んだ。春信は18世紀後半に始まる錦絵にあって、その創始期の第一人者として知られる。春信の作品は1図あたりの残存数が少なく、その8割以上が海外に流出してしまっている。とりわけボストン美術館は600点以上にものぼる春信コレクションを有しており、今回出品された春信および同時代の作品150点のうち約8割が初めての“里帰り”だという。
実はボストン美術館は、これら浮世絵だけではなく、日本にあれば「国宝間違いなし」といわれる第一級の日本美術の至宝を収蔵していることで有名だ。そして、このボストン美術館に限らず、海外には日本美術を多数所蔵する美術館が他にいくつも存在している。その多くが明治維新か太平洋戦争敗戦後の混乱期に流出したといわれている。
誰が、どのような経緯から日本美術に惚れ込み、海外へ持ち出したのか――その一端を紹介したい。
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